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兎に角全力で逃げた先、入り組んだ路地の向こうにある倉庫に飛び込んだ。






「いっ…」






「大丈夫?」







殴られた頬に鏡花が心配そうにハンカチを当てる。
真っ赤な赤はまるで口紅のように彼女の唇を彩らせた。







「思い切り殴られた…十四歳相手に銃でぶん殴るか…?
信じられない跡が残ったらどうするんだクソ野郎…」






過去に冷遇されたせいか、子ども相手になると若干過保護になるAはひどくイラついているようだった。
鏡花が傷つくことは怒るくせに、自分が殴られたことには怒ってないらしい。






「助けてくれて、ありがとう。あと…すぐに信じなくてごめんなさい」







「あの…僕も」







「あぁ…そんなのもういいよ」







グッと唇を拭い、Aはフゥと息を吐いた。







「いきなり違うなんて云われて混乱するのも無理はない」







「でも…なんで気づいて」







「…なんとなく、判った」







仕草、呼吸、話し方。
それら全てが今とは微妙に違って見えた。
なんとなく、確信なんてない。






「なんとなく、あの人じゃないと思っただけ」






先輩後輩と云うにはあまりに近く、そして名前のない関係。
二人の間にあるのはそんなものだ。







「…あの人はマフィア幹部と云っていた。
まさか今は、あの人がマフィアだった時代?」







「恐らくそうだと思う。
黒服が使っていた銃、あれは今マフィアが使っているものじゃない」







鏡花は向けられた銃を思い出し、ハッとする。







「あれは、四年前までマフィアが使っていた…!」







「と、なるとこの世界は四年前の説が濃厚か。
あの路地裏の既視感も、ヨコハマだというなら説明がつく」






そこまで考え、Aはふむ、と考えた。







「まとめると、この世界は四年前のヨコハマで、
太宰さんはマフィア幹部、そして私たちはその世界に飛ばされた」







黒を知れ、その意味も今となっては判る。







「問題は、帰る方法が無いということか…」







三人の間に沈黙が訪れる。
その時、いきなりAの携帯が鳴り響いた。







「着信……太宰さんから」






顔を見合わせる。
Aは若干震える指で通話を押した。







「…もしもし」







本音をいうと少し怖かった。
もし、出たのが"あの太宰"だったら。







『Aちゃん?』







そんな恐怖は、優しげな声で自分を呼ぶ太宰によって消えた。
いつもの、太宰だった。

*→←*



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もこすけ(プロフ) - あさん» ご指摘ありがとうございます。その通りでございます。直しておきます。ありがとうございました。 (2021年11月8日 17時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
- すみません、「あの娘は誰の子?」の小雪ちゃんのセリフで「私は過去から来たんだよ」と言っていますが「未来」の間違いではないでしょうか私の勘違いや解釈違いであったら申し訳ありません (2021年11月7日 17時) (レス) @page32 id: b7271b87d8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ワンコソバさん» 折角のお話、申し訳ありませんでした。応援のお言葉、ありがとうございます。これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします。 (2019年5月5日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ワンコソバ(プロフ) - そうでしたか…。残念ですが、それからのもこすけさんが書く作品を楽しみにしてます!頑張ってください!(^○^) (2019年5月4日 20時) (レス) id: c31389e4fc (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ワンコソバさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。そういった応援はとても嬉しいです。リクエストなのですが、現在締め切っております。他作品とのコラボも、基本的にご本人様からのリクエストのみ受け付ける形となっています。折角のお話なのに、申し訳ありません。 (2019年5月4日 18時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2019年4月6日 19時

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