その少女、正真正銘黒鼠 ［瀬那様リクエスト］ ページ12
この世界の時間の流れは一つだ。
だが、空間を抜けて仕舞えば世界はいくつも存在している。
そう断言できるのは、他でも無い自分が元はこの世界の生まれでは無いから云えることである。
『改めて思うと、こうやって探偵社にいるのも一つの分かれ道を選んだに過ぎないのかも』
真っ青な月が出ている夜、冷えた空気が頬を撫でた。
『あの時、もしも初めて会ったのが敦じゃなかったら。
もしも探偵社に誘ったのが太宰さんじゃ無かったら…。
それはそれで全く別の道に進んでいたのかもしれない』
こんなことを考えているが、今の生活に不満はない。
自分を受け入れてくれる仲間も、居場所もある。
『もし、私が探偵社を選んで無かったら』
そんな莫迦げた話を鼻で笑い、帰り道を進む。
「…すみません」
後ろから声をかけられ、足を止めた。
聞こえてくるのは、くぐもった女の声。
「尋ねたいことがあるのですが…」
全身を黒い服で包んだ、細身の女だった。
マスクをして、フードを被っているせいで顔が見えない。
声も何処か無機質に感じ、自然と体が警戒態勢に入る。
「尋ねたいこと？」
「…えぇ」
一瞬、フードが揺れて女の目が見えた。
その目は、自分と同じ紫色をしていた気がした。
「…でもどうやら、必要は無いようです」
女は首を覆っていた服をめくる。
そこには、無骨な機械があり、それを躊躇いもなく外す。
「"どうせ、すぐ終わるから"」
「ッ、その声…！！」
ゾッとした。
女の声は、恐ろしいほど聞き慣れた音だったから。
聴かない日はない、あの声。
「どうして…私と同じ声を…」
女がつけていたのは変声機だった。
それを地面に落とすと、女は静かにフードをとった。
「世界は一つじゃない、それは私も貴女もよく知ってる」
背中まで伸びた真っ黒い髪、まるで昔の自分のようだった。
「私はあちら側を選んだ、後悔なんてしていない」
女の瞳は紫だった。
目の形が自分とよく似ていた、鏡を見ているようだ。
「だからこそ…"あの人"が望むならなんだってする」
女がマスクを取り払う。
月明かりに照らされたその顔は…自分と同じだった。
「初めまして、私は『死の家の鼠』頭目側近、小泉Aです。
以後お見知り置きを…"私"」
恭しくこうべを垂れた少女は、別世界の自分であった。
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もこすけ(プロフ) - あさん» ご指摘ありがとうございます。その通りでございます。直しておきます。ありがとうございました。 (2021年11月8日 17時) (
レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
あ - すみません、「あの娘は誰の子？」の小雪ちゃんのセリフで「私は過去から来たんだよ」と言っていますが「未来」の間違いではないでしょうか私の勘違いや解釈違いであったら申し訳ありません (2021年11月7日 17時) (レス) @page32 id: b7271b87d8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ワンコソバさん» 折角のお話、申し訳ありませんでした。応援のお言葉、ありがとうございます。これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします。 (2019年5月5日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ワンコソバ(プロフ) - そうでしたか…。残念ですが、それからのもこすけさんが書く作品を楽しみにしてます！頑張ってください！(^○^) (2019年5月4日 20時) (レス) id: c31389e4fc (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ワンコソバさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。そういった応援はとても嬉しいです。リクエストなのですが、現在締め切っております。他作品とのコラボも、基本的にご本人様からのリクエストのみ受け付ける形となっています。折角のお話なのに、申し訳ありません。 (2019年5月4日 18時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もこすけ
| 作成日時：2019年4月6日 19時
