【文スト】この世界と番外編 その九

＊ ページ43

はぁ、とAは呑気に笑う太宰を見てため息をついた。
猟犬部隊が目の前にいて笑っていられるのなんてこの人くらいだろう。






「あれで十八？あれでか？」







Aは自分に集まる視線に居心地の悪さを感じ、そっと太宰の後ろに隠れた。
その仕草に太宰が「ん"ん！！」と唸って可愛い、と呟く。







「太宰さん、もういきましょう。
ターゲットを見失いますし、それに…」







「それに？」







異能が通用しない猟犬部隊が怖いこと。
云いたいことを判っていながら聞いてくる意地の悪さにAはボソッと、







「この間貴方がいない時に押しかけてきた女性に貴方の携帯番号教えてやる…」







「ごめんなさい行こう？すぐに行こう？ね？」







途端に機嫌を取るように云う太宰。
Aは口紅を塗った唇を少し歪に歪ませ、
出来ればこれからも会いたくはない猟犬部隊に御機嫌ようと会釈した。







「…で？」







「で？」







「なんでこうなるんですかね」







「神様のイタズラ」








「死神のイタズラでは？」








「隊長！！こちらなんて隊長によくお似合いです！！」







「ほう、そうなのか？」







「ふむ…ハバネロイチゴ味か…」








「その気持ちの悪い味絶対に買わないでくださいね」








同じ雑貨屋で当然のように居る猟犬部隊に、Aはやたらキラキラした店内で呻いた。
いく先々で会うこれは、運命というより因縁だ。







「仕方なかろう、ターゲットが同じなのだからな！」







突然の爆弾発言にAは、え、と福地の方を向いた。







「まさか…貴方達もあの二人を…」








「はい、別件で逮捕までは行かなくてとも拘束せよとの命令が」







「あらら、これは厄介」







厄介なものか、これでは彼女の旦那からの依頼が達成できない。
ここは警察関係者の彼らに譲るべきなのだろうが、







「おや、この顔はあれだ」








なんだろう、このまま引き下がるのは非常に気に入らない。







「仕方ない、引き下がるか、と思わせておいての
そんなことするかよ絶対にやってやるという顔だ」








「変なプライドに火ついてません？」








条野の言葉に太宰は「あの子はこうなると止まらないからねぇ」と笑う。







「行きますよ太宰さん、絶対、なにがあっても、私達が彼女達を捕まえます」








遠ざかっていくヒールの音に、猟犬達は目を丸くし、不敵に笑った。

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