＊ ページ35
どうしよう、Aの頭の中はその五文字で埋め尽くされた。
幼児化の異能者によって子どもにされ、街を歩いていたらドストエフスキーと遭遇した。
正直悲鳴をあげそうだったが、なんとか飲み込んで嘘をついた。
だが、そのせいで今、魔人だけでなく彼の仲間にも囲まれて逃げられない状況になっている。
『一か八か逃げるか？いや、子どもの足で逃げられるか…』
もし逃げて、捕まればどうなる？
嫌な汗が滲み、ゴクリと喉が鳴った。
「すみません、少々お時間よろしいですか」
そんなAの思いが伝わったのか、見回り中の警官が話しかけてきた。
「その少女とのご関係は」
流石警察、父が就いていた職なだけある。
訝しげな視線を向けてくる警官に、口を開こうとした瞬間、ふわりと抱き上げられた。
「この子はぼくの妹です、よく似てるでしょう？」
ドストエフスキーはAに顔を近づけて、そう云った。
何云ってんだという言葉が口から飛び出そうになる。
警官は疑い深い目で魔人とAを見比べ、そして段々と表情を柔らかくさせていった。
「そうでしたが、申し訳ありません。仲の良い兄妹のようで」
『ち、が、う！！』
瞳の色が同じことで、兄妹と判断した警官は敬礼をして、何処かへ行ってしまった。
「…ふふ、随分顔色が悪いですがぼくと居ると嫌なことでもありますか？」
ニコリと微笑みかけられ、背筋が凍った。
この男は初めから気づいていたのだ。
「…あるから、こんな顔してるんだよ」
さぁどうする、体は魔人に捕まっていて、後ろには彼の仲間。
ここからの最適解は…ふと、視界の隅に真面目そうな眼鏡の男が入ったので、反射的に飛びついた。
だが、足は魔人に掴まれているので男に引っ付き、ぶら下がった状態で叫ぶ。
「お、お父さん！！変な人に連れていかれるー！！」
「！？」
相手は目を白黒させ、向かいに立つのが魔人だと気づくと更に驚いた顔をした。
その声量で、周囲の者の視線が一気に集まる。
魔人はおや、と手を離し、ゴーゴリは「逃げようか」と顔を引きつらせてマントを翻す。
手を離されたことで地面に降りると、一目散に逃げ出した。
『巻き込んでごめんなさい…本当にすみませんでした坂口参事官補佐…』
逃げる途中、そんなことを懺悔しながらAは逃げた。
脳裏に、安吾の驚いた顔がいつまでも焼きついていた。
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もこすけ(プロフ) - nino=sakuさん» コメントありがとうございます。怪談、いかがでしたか。実際に遭遇したくはないですね…。 (2019年3月26日 18時) (
レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
nino=saku(プロフ) - 主人公の怪談夜中に読んでたので普通に怖かったですw (2019年3月26日 0時) (レス) id: 2561bedadd (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 凛さん» コメントありがとうございます。わざわざ有難いお言葉感謝します。もう少し続きますので、お楽しみに。 (2018年12月7日 23時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
凛 - リクエスト受けてくださって本当にありがとうございます！作品とても楽しみです！ (2018年12月7日 14時) (レス) id: 9fddac5d14 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - みぃちゃん，ｍさん» コメントありがとうございます。小泉のボーカル、見たいてますね。これから登場しますので、お楽しみに。 (2018年12月7日 10時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もこすけ
| 作成日時：2018年10月28日 18時
