【文スト】この世界と番外編 その八

＊ ページ33

散々日焼け止めを塗りたくられ、もう気力の限界なのかAはパラソルの下でぐったりしていた。






「ふん、軟弱な小娘め」






「現在進行形で日陰に逃げてる男に云われたくないなぁ」







「芥川先輩は繊細なんです！太陽の光なんてそんな体に悪いもの…」







「五月蝿い樋口」







隣のパラソルで休む芥川とAが睨み合う。







「協定さえ無ければ貴様を切り刻んで魚の餌にしていたものを」







「それは面白い、芝刈り機ならぬ餌やり機とは傑作だ」







喧嘩をふっかける芥川、売られた喧嘩は買うA。
お互い暫く睨み合うと、おもむろに立ち上がった。







「上等だ、今ここで決着をつけてやろう」







「狗を大人しくさせるのも必要な事だから仕方ない」






だが異能を使っての殺し合いはご法度。
ならばどうするか。






「おいあいつら見えなくなったぞ」








「芥川先輩…水中ミサイルみたいに泳いでましたね」







「ありゃあ異能使ってたな…だが直ぐに止まったところを見るとAに使用停止されたな」








まさかの水泳勝負となった。
異能使用あり、負けたらなんでもするというルール付きの。
二人が見えなくなって暫くすると、海から気絶した芥川を引きずってAが戻ってきた。







「途中で沈んでた」







「芥川せんぱーい！！生きてますか！あ！生きてる！！」






「手前大人一人引っ張ってよく泳げたな…」






「毎日のように太宰さんを川から引っ張りあげてるので」







ツゥー、と髪から胸元に水が伝う。
なんとも云えない扇情的な光景に目をそらすと、Aは首を傾げた。







「海、綺麗なんですね」







おもむろにAは海を眺めてそんなことを云った。
果てのない青い世界、水中はキラキラしていて綺麗だった。







「…手前も餓鬼みてぇなこと云うんだな」







そう云うとAはそうかもしれませんね、と波打ち際で少しだけ口元を緩ませた。







「Aー！！ビーチバレーしましょー！！」







遠くでエリスがバレー片手にそう叫ぶ。







「ま、案外悪くねぇだろ？」







「…さぁどうでしょう」







素直になれない少女はそう云ってエリスの元へ向かう。
可愛くない、と思いつつも中也は笑った。
だがその後、ビーチバレーでAのアタックが当たった立原と梶井が気絶した時、
子どもにしては容赦なさすぎだと改めて思ってしまった。

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