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敦の向かいには二人の子供がいる。
一人は隣に座る少女の横顔をじっと見つめる少年、
もう一人は少年に見つめられ居心地が悪そうに顔をそらしている。
すると、太宰少年はふう、とため息をついて前に向き直った。






「…うん、やっぱり気のせいかな。君のこと、記憶にないや」







「…あ、そう…」






Aは若干『なんだこいつ』みたいな顔をしつつ、太宰から距離を取る。
その光景を物陰から見つめていたナオミは探偵よろしく不敵に笑った。






「あれは異性が気になり始めている少年の顔ですわ」






「ナオミ、でも太宰さんには記憶が…」






「いいえ、あれは意識してます。間違いありません」





ナオミは自信満々に云った。
すると、太宰との微妙な距離を誤魔化すようにAは出されたカステラに手をつける。
それを一切れ口に入れると、






「美味しい」






ふにゃりと、年相応に笑った。
十八歳のAは甘いものが苦手だが、幼少期は普通に好きだったらしい。
その笑顔をじっと太宰は見つめていた。






「…なに」







「…ッ、なんでもない!!」







途端に顔真っ赤にして太宰は顔をそらした。
Aはキョトンとした顔をするが、ナオミからしたらそれは判りきったこと。







「恋に落ちた音がしました」






「あー…Aちゃんって結構モテるんだね…」






「ギャップ萌えですわ兄様。
太宰さんの顔を見てください、あれは恋する少年の顔ですわ」






太宰少年、攻略。
谷崎兄妹の脳内にそんなテロップが流れる。







「あ、これ…紅茶?」







「そうだけど…苦手だった?」







「うん」







「じゃあ僕の珈琲飲む?あ…でも今子供だから飲めないかな…」







「大丈夫、お砂糖入れれば飲める」






敦と飲み物を入れ替えると、太宰がボソッと呟く。






「砂糖入れるなんて子供みたい」







「…貴方は入れないの?」







「入れないよ、そんなに子供じゃない」






子供ではないと云いたいのだろう。
それを汲み取ったナオミは良いところを見せたいのだと理解する。
だが、そんなこと知りもしないAはふぅんと云った後、






「私も入れないけどね。そもそも貴方誰」






太宰渾身の良いとこ見せを蹴るどころか暗闇に蹴り落としたAは簡潔にそう云い放った。
太宰は一瞬子供のように泣きそうな顔になった後、小さな声で名乗る。
それすらも彼女は「声が小さい」と容赦が無かった。

*→←幼児化の二人と大波乱 [琥治*こはる*様リクエスト]



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もこすけ(プロフ) - nino=sakuさん» コメントありがとうございます。怪談、いかがでしたか。実際に遭遇したくはないですね…。 (2019年3月26日 18時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
nino=saku(プロフ) - 主人公の怪談夜中に読んでたので普通に怖かったですw (2019年3月26日 0時) (レス) id: 2561bedadd (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 凛さん» コメントありがとうございます。わざわざ有難いお言葉感謝します。もう少し続きますので、お楽しみに。 (2018年12月7日 23時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
- リクエスト受けてくださって本当にありがとうございます!作品とても楽しみです! (2018年12月7日 14時) (レス) id: 9fddac5d14 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - みぃちゃん,mさん» コメントありがとうございます。小泉のボーカル、見たいてますね。これから登場しますので、お楽しみに。 (2018年12月7日 10時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年10月28日 18時

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