【文スト】この世界と番外編 その四

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これは、実際に私が十五の時に体験した話です。
私は親戚の家で暮らしている時、一人で離れに寝泊まりしていたんです。
寝床の障子を隔てた向かいは小さな庭になってました。
ある日、夜に寝ていたら中庭から物音がして、また変なものが入り込んだかなと思ったんです。








「また、ってなに」








「敦黙れ」









昔から霊感は強い方で、よく見えたんです。
でも大抵は悪戯程度だし、悪いものはそうそう居ません。
だからその日も気にせず寝てました。
そしたら、ガリガリって引っ掻くんですよね。
庭につながる障子を、そのなにかが。








ガリ、ガリ…ガリガリッ…








面倒だと思いつつ、その日は寝ました。
次の日、目を覚ますと何故か寝床においてあった花瓶が倒れていて、変だな、とは思いました。
他は特になにもなかったので、放っておいたんです。
そうしたら、その日の夜も昨晩と同じことが起こりました。
次の日も、その次の日も。








「…」









「乱歩さん、気づいても黙っててください」








ある日、あまりに五月蝿いから庭に続く廊下と部屋の四隅に塩を置いたんです。
こうすれば離れていくだろうと思って。
そして、寝ました。
その晩、今度は引っ掻く音ではなく、別の音がしたんです。








「ああ、あぁ、憎い、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い」







ってね。
流石にまずいと思いましたがあることに気づいて、目を開けることはしませんでした。
漸く夜が開け、私はすぐに部屋の障子を開けました。








「廊下の塩は、なにも変化がありませんでした。
でも、部屋の塩は違った」








冷たい空気の中、Aは低い声で云った。









「部屋の塩は、黒くなるほど湿っていたんです」








「え…」








「何故か判る？」







隣に座る敦にAはニヤリと不敵な笑みを見せた。
そして皆の目を見渡しながら、口を開いた。







「そのなにかは庭にいたんじゃない…ずっと私の部屋にいたんだって」







ゾワァッと肌が粟立つ。
なんとも云えない気味の悪さに誰かが引きつった悲鳴をあげた。








「障子を引っ掻いていると思った音は…部屋の畳を引っ掻いている音だった」








Aが爪の先で机を引っ掻く。
ガリガリ…ガリガリ、と。
そして、







バン！！









ーぎゃああああああ！！ー









一同の恐怖が最高潮になった瞬間、Aは机を叩いた。
そして、絶叫が響き渡った。

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