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Aが義母の頬を殴るより早く、太宰はそう云った。



「貴方達は彼女に求めるだけ求めているのに彼女の言葉には耳を傾けようともしない。
理想だけを語り、現実を見ない典型的な権力者だ」



ねぇ国木田君、と云えば国木田は眼鏡を押し上げ、「まったくもってその通りだ」と返す。



「失礼ながら貴方達に保護者を名乗る資格はない。
子どもは権力の道具じゃないんだぞ」



プライドが高い義母の目元がピクリと動く。



「Aちゃんはいい子です。だから…そんな彼女を利用した貴方達は正直、許せません」



「私は、Aさんのお友達です。
なのに、友人である私より身内である貴方達の方がどうしてAさんのことをなにも知らないんですか」



「…まだ何かありますか?」



太宰がニッコリと綺麗な笑みを浮かべた。
若干気の弱い義父の方はなにも云えないでいたが、義母の方はそうではなかった。



「この子は普通じゃないわ。どうせ貴方達も騙されているのよ。
…この見透かしたような紫の目」



義母は声を荒げるような人ではない。
静かに他人の矜持をズタズタにするのだ。



「まるで化け物みたいで気味が悪い。
価値が無ければ引き取ってなかったわ」



「ッ…」



あまりの言葉にぐらりと視界が揺れる。
悪いことなんてしてない、なのに、どうしてここまで。



「だから…」



「もう口を閉じたまえ、不愉快だよ」



気づけば、太宰が冷たい表情をしていた。
怒っている、直感的にそう思った。



「彼女の事を何も知らないくせに耳障りだ。
…今すぐここから消えろ」



その気迫に流石の義母もたじろぐ。
国木田や谷崎も同じように目を向ける。
二人は悔しげにAを睨むと立ち去った。



「Aさん、大丈夫ですか!?」



気づいたら膝から座り込んでいた。
ナオミが心配そうに覗き込んできて、つい泣きそうになった。



「大丈夫ですわ、Aさんはなにも悪くありません」



「…うん」



「しかし…本当に腹立たしい奴らだったな。谷崎、塩撒いておけ」



「国木田さん、流石に塩は…」



「あ、私あるよ」



何故か塩を持っていた太宰のを借りて、本当に撒いた。
それを見て思わずクスリと笑う。
もうあの人達と自分は関係ない、大丈夫なんだと。
…その日、Aが社員寮に帰ることはなかった。

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もこすけ(プロフ) - 有栖さん» リクエスト承りました。嬉しいお言葉ありがとうございます。 (2018年8月13日 6時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
有栖(プロフ) - リクエストです。薬か何かで小泉ちゃんが5歳くらいになって、武装探偵社で天然笑顔や、寂しがり屋を披露して太宰さんの事をお兄ちゃんって呼ぶって感じのお願いします!!!!!多めですみません!この作品めっさ好きです! (2018年8月12日 23時) (レス) id: e65e94b2de (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ゼロレールさん» リクエスト承りました。わざわざコメントありがとうございます。感謝します。 (2018年8月6日 22時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロレール(プロフ) - リクエストいいでしょうか?以前にやった幼い太宰さんの逆トリと同じで、幼い中也さんの逆トリお願いします。後、前回コメントができず、すみませんでした。リクエストは無理でしたらスルーでも構いません。よければ宜しくお願い致します。 (2018年8月6日 22時) (レス) id: 3e587b9082 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 千晴さん» こちらこそありがとうございます。 (2018年8月6日 17時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年7月22日 21時

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