【文スト】この世界と番外編 その四

過去の代償 ［ヒカル様リクエスト］ ページ31

最近、妙な事件が多発しているらしい。
いきなり建物が消えたり、人が行方不明になり数日後に戻ってきたり。



「行方不明になった人は皆『知らない土地を彷徨った』と証言しているらしい」



「…へぇ」



「心当たりありそうだね」



「…こっちに来た時の私と似ているなと思いまして」



依頼された事件の捜査をする為に外に出ていたAは呟く。
太宰、国木田、谷崎兄妹と行動をしつつ、情報を集めていた。



「まあ十中八九異能者の仕業だろう。
巷では『神隠し事件』なんて名前も付いているらしいけど」



「神隠し、ですか」



そこでふと、自分が消えた世界のことが頭をよぎる。
自分はあの世界で行方不明者になっているのだろうか、はたまた死んだことになっているのだろうか。
…いや、今となってはそんなこと興味もない。



「お兄様！なんで逃げるんですか！」



「ナオミ、ちょ、こんなとこでやめッ」



「やめろ！公共の場でいちゃつくな！」



谷崎兄妹のじゃれつきを叱咤する国木田の声で現実に引き戻される。
あぁ、今日も危ないと云いつつ国木田に助け舟を出そうとした時、



「…A？」



後ろから名前を呼ばれた。
その声があまりにも、"あの女"の声に似ていて、一瞬呼吸を忘れる。



「貴女、Aなの？」



まさかそんなことあるはずない、と後ろを振り向く。
そこには、死んでも会いたくなかった彼奴らの姿があった。



「…生きてたのね、"良かったわ"本当に」



「あぁ無事でなによりだ」



どこか冷たい印象を抱かせる女と、周りに一切の興味を持たない男。
記憶がほじくりかえされる。
驚きと共に凄まじい嫌悪感が湧き上がってきた。



「なんで、貴方達が此処に…」



「気づいたら此処にいたのよ。…それよりなに、その格好は」



小泉家の娘として恥ずかしい、と女が呆れた顔をする。
Aはそれを呆然と見つめていた。
並々ならぬ後輩の様子に太宰が大丈夫かいと声をかける。
しかし彼女に応答はない。



「まあいいわ、貴女が無事でいたのなら良しとしましょう。
貴女は小泉家の跡取りになる義務があるのだから」



小泉家、跡取り。
そこまで聞いて太宰は直感的に理解した。
この二人は、Aを引き取った夫婦。
異能により、こちらに飛ばされてきたのだと。

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