＊ ページ13
聴こえてきたのは落ち着いた男性の声だった。
「すみません…大丈夫です」
「貴女、今自分がどんな状態か判りますか？このままだと倒れますよ」
「…お気遣いな…」
く、そこまで云おうとして吐き気が襲ってきて思わず口を押さえた。
ぐらりと視界が揺れる。
支えてくれた人物は、はぁと呆れたようにため息をついた。
「どこかで休みましょう。少し歩けますか」
誰かの手を借りるのは嫌だが、自分ではどうしようもなくコクリと頷く。
すると彼は優しい手つきで肩に手を回し、ゆっくりと歩き出した。
「貴女、さっきからずっと死にそうな音でしたよ」
音？そう聞き返したくてもまともに反応も出来なかった。
代わりに込み上げてくるのは気持ち悪さと目眩。
そのせいで相手の顔も確認せず、ふらふらと着いていく。
すると少し歩いた先で足が止まった。
「ここの公園で休みましょう」
公園だと云うのに人気が少ない。
恐らくこの暑さのせいで外を出歩く人も少ないのだろう。
彼はゆっくりと木陰のベンチに自分を座らせた。
「何か飲み物を買ってきます。待ってられますか」
「ん…」
口を押さえて頷くと彼は何処かへ行った。
木陰なだけに涼しいし風も心地よいが気分の悪さは変わらず。
それに加え、先程から視界に入るものたちのせいで気分の悪さは大きくなる。
『なんか…思い出すなぁ』
親戚の家に居た時、こんな事は数回あった。
だけど、誰も助けてくれなくて一人で耐えていた。
冷たいあの家で、一人で。
「スポーツ飲料で良かったですか」
ピタリと頬に冷たいペットボトルが当てられ、引きつった声が出た。
「あ、お金…」
「結構です。それぐらいの手持ちはありますから。
兎に角早く飲んでください、貴女熱中症ですよ」
「…ありがとう」
素直に受け取り、ゴクリとスポーツ飲料を飲む。
適度な甘みと僅かな塩っぽさを感じた。
たしかにこの暑さなら熱中症になるかもしれないが一応水は飲んでた。
「水飲んでたのに…」
「それだけでは塩分が足りずにどちらにせよ熱中症になります」
指摘され、自己管理の低さに肩を落とす。
すると男性は隣に座り、どうぞと云った。
「…は？」
「ここに寝なさいと云ってるんです。頭を高くしないと治りませんよ」
ハッキリ云おう、無理である。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 378人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もこすけ(プロフ) - 有栖さん» リクエスト承りました。嬉しいお言葉ありがとうございます。 (2018年8月13日 6時) (
レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
有栖(プロフ) - リクエストです。薬か何かで小泉ちゃんが5歳くらいになって、武装探偵社で天然笑顔や、寂しがり屋を披露して太宰さんの事をお兄ちゃんって呼ぶって感じのお願いします!!!!!多めですみません！この作品めっさ好きです！ (2018年8月12日 23時) (レス) id: e65e94b2de (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ゼロレールさん» リクエスト承りました。わざわざコメントありがとうございます。感謝します。 (2018年8月6日 22時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロレール(プロフ) - リクエストいいでしょうか？以前にやった幼い太宰さんの逆トリと同じで、幼い中也さんの逆トリお願いします。後、前回コメントができず、すみませんでした。リクエストは無理でしたらスルーでも構いません。よければ宜しくお願い致します。 (2018年8月6日 22時) (レス) id: 3e587b9082 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 千晴さん» こちらこそありがとうございます。 (2018年8月6日 17時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もこすけ
| 作成日時：2018年7月22日 21時
