【黒バス】藍色少女の噂話 EXTRA GAME 2

続54話 ページ5

歓声の中、第３Ｑが開始される。
ボールはナッシュからのスタートだ。









「ッ！」









ベンチに居ても分かる、ナッシュの気迫。
まるで銃口を向けられているかのように本能が警告を出す。
ナッシュのマークの黄瀬は集中力を一気に上げ、
最警戒モードに入る。









「きー君…警戒してる」









「一つの動作も見すごさないって感じだな」









さあ、どう動く。
ナッシュは黄瀬相手にどんな技で…









「…え？」









ボールが、黄瀬の後ろにいる選手にパスされた。
黄瀬は一歩も動けずにいた。
あんなに近くにいて、警戒していたのに。









「反応…できなかった…？」









ボールはジャバウォック選手によりゴールに入れられた。
防ごうとした青峰も間に合わなかった。
選手と会場を包む、戸惑いと驚愕の雨。
橙山はありえないものを見たように固まり、
雫はあまりの光景に絶句し、
紺野は目を見開いたまま動けず、
桃井は口に手をあてて硬直していた。
そして、藍澤も。
情けなく唖然とし、言葉が出てこなかった。
ここにいるマネージャー五人は少なくとも
全員バスケの奥深くまで知っている。
誰かがナッシュのパスが見えなくても一人くらいは
彼のパスが見えていていいはずだ。









「誰も…見えなかった」









選手の動きを知り尽くした彼女達五人、
誰一人としてナッシュのパスが分からなかった。
すると、赤司がポツリと呟く。









「予備動作がないな」









「予備動作が、ない？」









「あぁ、人が速く動いたり大きな力を出したり

しようとすれば、その直前、

必ず反動や勢いをつけるための動きが入る。

それが予備動作だ」









「…」









「高速スポーツの攻防は相手の動きを見てから

反応するのでは遅い。

わずかな予備動作を見逃さず、

それに反応しなければ間に合わない」









「…まさか」









「そのまさかだよ。

ナッシュには予備動作が全くない。

ベンチにいる者にすら分からないほどだから

マークしていた黄瀬はもちろん、

他の4人も全く見えていなかったはずだ」









ありえない。
そんなことがあるのか？
予備動作がない？









「そんな…」









事態は予想を超えるスピードで悪くなっていた。

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