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五話 [太宰治という男は] ページ7

それなりに距離がある川の向かい側。
腕組みをして不機嫌オーラを出している男がいた。
そんな男に川の精霊兼桃太郎の男は呑気に声をかける。



「おー国木田君、ご苦労様」



「苦労は凡てお前の所為だこのジサツ嗜癖!お前はどれだけ俺の計画を乱せば」



ギャンギャン叫ぶ男。
その時、Aはただただ呆然とした。



「国木田…?国木田…独歩…?」



このジサツ嗜癖の男は確かに彼を国木田と呼んだ。
国木田、国木田…まただ。
敦の時といい。なんでこう…



「文豪の名…」



中島なら兎も角、国木田なんて苗字なかなか居ないだろう。
それとも文豪の名が流行っているのか?
その時、彼女は思考を回すのに集中しすぎて、
国木田の名前を口にした瞬間を聞かれていたことなど気づかなかった。



「…そうだ君達。良いことを思いついた。彼は私の同僚なのだ。彼に奢ってもらおう」



「へ?」



「…はい?」



ようやく思考の世界から抜けた少女に太宰はクスリと笑う。
後ろで国木田が「聞けよ!」と叫ぶ。



「君達、名前は?」



「中島……敦ですけど」



「…小泉A」



淡々と云ったAは訝しげな表情で男を見つめる。



「ついて来たまえ。敦君、Aちゃん何が食べたい?」



「はぁ…あの…」



敦は頭をかいて遠慮気味に言った。



「茶漬けが食べたいです」



その回答がお気に召したのか男は楽しそうに笑った。
どうやら餓死寸前の少年が茶漬けを所望したのが面白かったらしい。



「良いよ。国木田君に三十杯くらい奢らせよう。君は?」



「…空腹じゃないので要りません」



「あらら、どうせ奢るの彼だからいいのに」



「俺の金で勝手に太っ腹になるな太宰!」



「太宰…?」



太宰。
太宰?
今度こそ間違いようのない名前に頭痛がした。



「ああ私の名だよ」



本当にどうなっているのか。
何故か生きている自分、
見たこともない街、
文豪の名を持つ者達。



『私の考えが合っているのならこの男の名前は』



「太宰、太宰治だ」



嗚呼もうどうなっているんだ。
大正解じゃないか。

六話 [申し込み拒否は楽じゃない]→←四話 [川の精霊を引き上げた]



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太宰の包帯希望者 - シリアスううううう!めっちゃ好みです!更新頑張ってください (2月5日 22時) (レス) @page21 id: efd9a7d1a1 (このIDを非表示/違反報告)
条野さんの鈴飾り食べたい - ネタが思いつかないので申し訳ないのですがこちらの『この世界で生きるのは不可能という結論が出ました』の小泉ちゃんとコラボさせて貰っても宜しいでしょうか?誠に勝手で申し訳ございません。 (2022年12月17日 11時) (レス) id: 36ec43f1b9 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 碧さん» ご指摘ありがとうございます。実はあえて意味がおかしい英語にしています。その話自体がギャグのような内容なので、正しい英文より、日本語に直すと面白い英文の方が良いかと思い、あえて間違った内容にしております。 (2021年12月14日 7時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 二十三話太宰の中のドラムになってませんか? (2021年12月12日 18時) (レス) @page25 id: 6588339009 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ルチアーノさん» ご指摘ありがとうございます。直しておきます。 (2021年3月23日 20時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年3月11日 14時

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