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三十八話 [マフィアの忠告] ページ40

血も止まってきた頃、中也はポツリと彼女に云った。
それは彼女を危険に曝さないための忠告だった。
少なくとも、ソレに彼女が巻き込まれる事が嫌だったのは事実だ。



「もうこの路地には来んなよ」



中也の忠告に少女は首を傾げた。
中也は視線も合わせず言葉を続ける。



「ここら一帯はポートマフィアの縄張りだ。
取引も行われる。一般人が来ていい所じゃねぇ」



もしも目撃して仕舞えば、最悪の場合、死。
ポートマフィアの苛烈さは有名だ。
彼女もこれなら分かるだろう。
そう思っていると、彼女から予想外の答えが帰ってきた。



「ポートマフィアって?」



思わず言葉を失った。
ポートマフィアを知らない?
この街にいる限り、必ずといっていいほど皆知っているのに?



「手前ェ何処の金持ちのお嬢だよ」



「私この街に来たばかりだから」



「にしたって…」



世間知らずか、それにしても無知すぎやしないか?
その時彼女が「そうか、この世界はマフィアもいるのか」と云っていた事を彼は知らない。



「いいか?ポートマフィアってのはヨコハマを拠点にしてるマフィアだ。
政治経済にも関わりを持つ大犯罪組織といっても過言じゃねぇ。
悪いことは云わねぇから関わるのはやめとけ」



そう、本来関わるべきではないのだ。
マフィアの幹部である自分とも。
彼女とは生きる世界が違うのだから。



「そう…マフィア…犯罪組織…」



考え込むようにしてを組む。
Aの目が伏せられる。
これでいい。マフィアは恐ろしいと思わせる。



「奴らに関われば手前も…」



「でも…私はそこに生きる人の事を悪く云うつもりはない」



「…は?」



マフィアは恐ろしい。
そう教え込ませようとしたのに、
彼女が云ったのは予想を軽く飛び越えたもの。



「きっとそこでしか生きられない人が居る…。
マフィアって…やってることは悪いことかもしれない。
でもだからって真っ向から否定するのも違う気がする」



「何云ってんだよ…奴らは普通とは違うんだぞ!」



関わらせたくない。
この道に彼女を引き摺り込みたくない。
なのに何故分からない。
思わず大声を出すと、恐ろしく冷たい声が鼓膜を震わせた。



「普通ってなに?」



その声は温度を感じなかった。

三十九話 [意思は脆くも美しい]→←三十七話 [調子は狂うためにあるらしい]



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太宰の包帯希望者 - シリアスううううう!めっちゃ好みです!更新頑張ってください (2月5日 22時) (レス) @page21 id: efd9a7d1a1 (このIDを非表示/違反報告)
条野さんの鈴飾り食べたい - ネタが思いつかないので申し訳ないのですがこちらの『この世界で生きるのは不可能という結論が出ました』の小泉ちゃんとコラボさせて貰っても宜しいでしょうか?誠に勝手で申し訳ございません。 (2022年12月17日 11時) (レス) id: 36ec43f1b9 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - 碧さん» ご指摘ありがとうございます。実はあえて意味がおかしい英語にしています。その話自体がギャグのような内容なので、正しい英文より、日本語に直すと面白い英文の方が良いかと思い、あえて間違った内容にしております。 (2021年12月14日 7時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 二十三話太宰の中のドラムになってませんか? (2021年12月12日 18時) (レス) @page25 id: 6588339009 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - ルチアーノさん» ご指摘ありがとうございます。直しておきます。 (2021年3月23日 20時) (レス) id: 102f3088ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年3月11日 14時

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