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二百十話 [死の天使] ページ10

軍警最強の特殊部隊《猟犬》とぶつかったのはつい数刻前のことだった。
ほんの数分、ほんの数手で国木田達は追い込まれた。



「仲間を見捨てず助けに戻り敢えなく全員返り討ち…ま、世の中大抵そんなものです」



勝者の笑みを浮かべ、条野は国木田達を追い詰める。
鐵腸の手が刀にかかった瞬間、賢治は近くにいた谷崎を突き飛ばし守る。
が、同時に二人は斬撃を受け、弾き飛ばされた。



「我が剣からは逃れられぬ」



刀が銀色に光り、全てを斬り伏せる。
このままではまずい、国木田は己の手帳を取り出した。



「『独歩吟客』!音響手榴…」



それは途中で止められた。
凄まじい速度で放たれた斬撃が手帳ごと国木田を斬り付けたのだ。



「これで手帳の異能は使えませんね」



「ッ、見え…たぞ…抜刀の…瞬間…」



地面に倒れ込みながら、国木田は呻き声と共に云う。
刀は生き物のように伸び、そして屈折した。
あの不可思議な動きで車を斬り、そして防御不可能な攻撃を作り出したのだ。



「全員の無力化を確認。…さて、鐵腸さん」



条野はまるで今日の天気を告げるように云った。



「女医の首を刎ねて下さい」



全員の表情が凍りつく。
今、なんと云った?



「善いのか?」



「仲間を治癒されると厄介です。
それに…彼女は『死の天使』、魔女と同じく死んだ方が世の為ですよ」



その呼び名に与謝野の顔色が変わる。
知られたくないことを知られたような、それでいて信じきれていないような表情。



「何故…その名を…」



呆然とする与謝野の前に、刀を構えた鐵腸が進み出る。



「即死ですよ鐵腸さん、瀕死だと治癒されますから」



「止めろ!殺すな!判った投降する!」



「…興味深い心音です」



叫ぶ国木田に条野の冷たい笑みが突き刺さる。



「理想主義の国木田さん、貴方、今ホッとしていますね?」



その声は国木田の心臓を冷やす。
嫌な汗が滲む。



「貴方の理想は気球のように大きく高い。
ですが気球は何時か必ず燃料が尽き…地に堕ちる」



ー貴方は『その日』に怯えて生きてきたー



止せ、国木田の声が震える。
気球の燃料が、尽きる。



「祝福しますよ国木田さん。明日から、貴方は自由だ」



冷たい刀が死の天使を狙う。
この次に狙うのは魔女の娘か。
だが、それを打ち砕く者の目がその光景を見下ろしていた。

二百十一話 [救いの手]→←二百九話 [利用する覚悟]



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riia - こんなに長いお話は初めてみるので尊敬します!他の夢小説よりちゃんとしていてすごく面白いです!神作だと思います!大好きです!登場人物の性格もちゃんと掴めていて見ていて楽しいです!ほんとに文ストの中に居そうで違和感がありません!設定とか凄いと思います!! (2022年8月5日 16時) (レス) @page24 id: 9d716aa4c8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (2019年5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (2019年5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (2019年5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時

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