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二百四十三話 [父からの手紙] ページ45

喧嘩の末に父を死なせる原因を作ってしまった、そう語ったAは今にも泣き出しそうな顔をしていた。
与謝野は咄嗟に、その顔が昔の自分と重なり彼女の腕を掴んだ。







「アンタは…悪くないだろう」







「…少なくとも、私はそうは思えませんでした」







父に庇われた子供の親が何度も礼と謝罪を述べてきた。
それすらも何も思わなくて、空中を漂うような意識だった。







「ずっと記憶がおぼろげで…親戚が私の引き取り先を押し付けあってる間、
私はどうやって償おうか、どうやって謝ろうかってずっと考えてました」







眠れない日が続き、この罪を、この罰をどうやって受け入れようかと考えた時、







「部屋の隅で光る、鋏を見つけた」







それはまるで用意されたように光っていて、あぁそうかと理解した。
こんな世界、父のいない世界に居ても仕方ない。







「喉に鋏を突きつけた、あと少しで死ねる、そう思った。
でも、まさに死のうとした時、部屋に飛び込んできたのは父の部下でした」








自分と同じように目に隈を作った彼は、こちらを見るなり土下座をした。
泣きながら何度も何度も、額から血が出るまで謝っていた。







「彼は父の部下で…犯人の説得を失敗した若い警官でした」







自分のミスで小泉さんを死なせてしまった。
本当に申し訳ない、死ぬまで恨んでください、と。
それをぼんやりと見つめていると、彼は手紙を渡してきた。







「…父からの、手紙でした」







自分に何かあった時の為に、一人娘に残した手紙。
どんな恨みが書かれているのかと、震える手で開けた。







「読んだ瞬間、泣き崩れました」







「…手紙にはなんて」







Aは消えそうな笑みを浮かべた。







「『お前は何も悪くない』」







「!」







手紙には、ただただ残してしまった娘への謝罪と、悪くないという言葉があった。
彼は知っていたのだ、娘が母親のことで悩んでいること、環境のことで苦しんでいること、
そしてそれを相談できなかったことを。







「父は…恨んでなんかなかった。だって…父の最後の言葉は」








部下から聞かされた、父の最後の言葉は。







『A、すまない、愛して、い…る…』








消え入る意識の中で、最後の言葉はそれだった。
父は最後まで、娘を恨んでなどいなかったのだ。

二百四十四話 [罰を受け容れる]→←二百四十二話 [永遠の別れの瞬間]



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もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - 全裸待機してますドゥルルルルルル卍^о^)卍(←)アッ、何時もハラハラしながら楽しく読ませて頂いてます!文スト十七巻…まだ読んで無いけど、物語に着いていけるようにします!これからも本編、番外編と共に更新頑張って下さい!応援してます!初コメ失礼しました! (5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時

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