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二百三十二話 [仲間との合流] ページ34

車が止まるブレーキ音と衝撃に、ハッと顔を上げる。
どうやら目的地に到着したようだ。



「今のは…」



白昼夢のような、それでいてやけに生々しい夢。
ジワリと手のひらに汗が滲んでいた。
これから仲間に合流するというのに、情けない。
でも、今のはまるで、



「誰かの、記憶」



少し前から、こんなことはあった。
母が生前使っていた教会に入った時も、見たことなんてないのに記憶があった。
だがこれは自分のものではない。
だとしたら…他の誰かの。



「ッ…」



何故か寒気がした。
鳥肌が立つ腕を抱きしめ、そっと小窓から外を盗み見る。
軍警は…居ない。



「行かないと…」



フードを深くかぶり、Aは車の扉を開けた。



その時、与謝野晶子を始めとする、谷崎、賢治の三人は隠れ家の外に出ていた。
森の指示を無視し、罠かもしれない取引場所に向かう。
その途中、与謝野は自分の過去を語っていた。



「何でもない」



懐かしむような顔の与謝野に、谷崎が声をかけると彼女は何でもない、と微笑んだ。
黒い髪を彩る、金色の髪飾りが揺れる。
この先がフィッツジェラルドとの取引場所。



「与謝野先生」



その時、聞き慣れた声がして、三人は立ち止まる。
後ろを向けば、そこには黒いフードに身を包んだ人物が立っていた。
彼女は周囲を確認すると、フードを脱いだ。



「Aちゃん!」



「アンタ、無事だったんだね…!」



人質事件での通話後、行方どころか生死も不明だったAがそこにはいた。
与謝野達は安堵の息をもらし、Aも少し安心したように息を吐いた。



「ご無事でなによりです。…兎に角、生きていてよかった」



久しぶりに見る、与謝野達の姿に肩の力が抜ける。
与謝野は「アンタも生きてて良かったよ」と笑った。



「これからフィッツジェラルドとの取引なんだよ。マフィアに気づかれる前に疾く…」



谷崎がそう云った瞬間、道の先、服が飾られた店先で怒鳴る青年の姿を見つけた。



「何でだよジイさん!」



茶髪の見覚えのある青年、黒蜥蜴の立原道造だった。
その他にも同じ十人長の銀、百人長の広津がいる。



『あれ…』



その時、なんとなく違和感を覚えた。
理由なんてないのに、まるで何処かが間違っているような違和感。



『なにかを…見落としている?』



究極の騙し合いが、始まる。

二百三十三話 [違和感はなにを意味する]→←二百三十一話 [罠と、赤と白]



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riia - こんなに長いお話は初めてみるので尊敬します!他の夢小説よりちゃんとしていてすごく面白いです!神作だと思います!大好きです!登場人物の性格もちゃんと掴めていて見ていて楽しいです!ほんとに文ストの中に居そうで違和感がありません!設定とか凄いと思います!! (2022年8月5日 16時) (レス) @page24 id: 9d716aa4c8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (2019年5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (2019年5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (2019年5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時

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