【文スト】この世界で生きるのは不可能という結論が出ました 6

二百十九話 ［少女を狙う三つの刃］ ページ19

「真犯人…《天人五衰》の計画は遠大で完璧。
犯行の証明どころか企みの全体図さえ判らない」



「…恐らくこの作戦を考えたのはあの魔人だ。
ここまで用意周到な策、あの男以外に考えられない」



一度壊されかけたからこそ判る。
あの男は一手一手に全く隙がない。
相手の心を惑わし、そして破滅へと導く。



「お陰で身に覚えのない罪まで被せられた。
…捕まれば死刑どころかその場で殺されても仕方ないような罪を」



Aの言葉に鏡花が、え、と目を見開く。



「貴女が…殺される？」



「そう、軍警に捕まって連中の手に引き渡されればまず間違いなく殺される」



「どうして？貴女に罪はないはず…」



「…魔女の娘」



彼女は小さく呟く。
魔女、母親の呼び名を口にした。



「私を捕らえようとした男が云っていた。
政府の一部の者は魔女を恨み、その血を途絶えさせようとしていると」



罪を犯した魔女。
許されない罪を背負った罪人。



「私が殺される理由は予想だけど、三つ。
一つ目は私が魔女の娘で、危険な異能を受け継いでいる可能性があるということ。
鏡花の件で知ったけど、異能は血縁者に譲渡できる。
つまり、私がその異能を持っていても不思議じゃない」



あくまで予想だが外れてはいないだろう。



「二つ目、私が魔女本人である可能性があること。
容姿もそっくりだし、あの魔女なら年を取らない異能を利用しててもおかしくない」



血液検査をすれば違うと判るだろうがどちらにせよ生きては帰れないだろう。



「三つ目、あとは簡単。
危険なテロ組織である探偵社の社員として排除すること。
抵抗したから殺した、そんな理由も成立する」



突きつけられた三つの理由。
彼女を殺すには十分すぎる三つの刃。



「この三つを解決しない限り、私は死ぬ。
いや…ほとんど怨恨のようなものだから解決のしようもないけど」



恐らく一部の者は魔女の血縁者ならばどんな手を使っても消したいのだろう。
魔女を利用した者、魔女に家族を殺された者、魔女を危険視する者。
黒い感情が今、自分に牙をむいただけの話。



「御伽噺にしては…残酷すぎる」



白雪姫の魔女は、最後にどうなったか。
魔女は最後、焼けた靴を履かされて死ぬまで踊った。
その役目が、自分に回ってきたのだ。
ハッピーエンドなんて、ない。

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