二百十八話 [牙をむく正義] ページ18
Aは敦と鏡花を見ると安心したように目を伏せ、悲しげな表情を浮かべた。
「良かった、無事で」
「Aちゃんどうして此処に…話では行方不明だって…」
「…ずっと隠れてたから。
そこで国木田さん達と連絡は取ったけど…そこからは何も」
「隠れてたって何処に?」
「昔、母が根城にしていた教会。
不思議と人が寄り付かなくて…二日間そこに隠れてた」
それより、とAは敦に詰め寄る。
「国木田さん達は…どうなったの」
「…国木田さんは生死不明だって…」
その言葉にAの紫の目が歪む。
自身の情けなさを噛みしめるように手を握る。
「そう…か…」
ズキリと胸に痛みが走る。
守ると誓ったのに、それは早くも崩れ去った。
「…敦、鏡花、行こう。此処も安全とは云えない。
《社会の敵》となった以上、慎重に行動しないと」
「…どういうこと?」
鏡花がなにかを知っているAに問う。
彼女は再びフードを被ると顔を歪めた。
「直ぐに判る」
彼女の言葉の通り、街に出るとその意味は直ぐに判った。
『こちら政府広報です。非常に危険な連続殺人犯は現在も逃亡中です。
不要不急の外出を控えるようお願いを___』
「犯人逮捕にご協力を!
この顔を見たら最寄りの政府機関までご一報下さい!」
「非常に危険な犯人です!見かけても絶対に近づかぬよう___」
街中にばら撒かれる探偵社の偽りの悪行。
テレビでも連日報道され、コメンテーターが厳しい意見を述べる。
『恐ろしい事件ですね、政府公認の探偵企業が裏ではテロ組織とは』
『えぇ、信じられぬ事件ですが現行犯として映像も残っており目撃者も大勢います。
彼等が過去に解決した数多くの事件も政府の信用を得るためであり自作自演ではないかとの疑いも…』
悪意なき善が牙をむく。
敦は苦しげな表情でテレビを見る。
「前だけ見て歩いて」
鏡花は店先に置かれていた帽子を取り、顔を隠せと敦に渡す。
「先ず逃亡資金の確保。それから列車で遠地に逃げる」
「今はそれしかない」
「遠地に逃げて…その後は?」
「…判らない」
なにも判らない。
闇の中を進むような不安が押し寄せる。
それでも、今はこれしかないのだとAは指名手配書を見つめて目を伏せた。
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riia - こんなに長いお話は初めてみるので尊敬します!他の夢小説よりちゃんとしていてすごく面白いです!神作だと思います!大好きです!登場人物の性格もちゃんと掴めていて見ていて楽しいです!ほんとに文ストの中に居そうで違和感がありません!設定とか凄いと思います!! (2022年8月5日 16時) (レス) @page24 id: 9d716aa4c8 (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - †三毛猫†さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。泣いていただけたようで、書いているこちらとしてはとてもありがたい事です。とても嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2019年5月19日 12時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
†三毛猫†(プロフ) - 毎回、夢主ちゃんの過去のお話しで泣いてしまいます。こんなに感動できる物語がかける作者さんを尊敬してます (2019年5月18日 19時) (レス) id: a139b9767e (このIDを非表示/違反報告)
もこすけ(プロフ) - さくらかつきのようになりたい←さん» コメントありがとうございます。そんなに喜んでいただけるとこちらとしても書いていてよかったと思います。近々、第7章を出しますのでよろしければ読んでください。皆様の応援、大変嬉しいです。今後とも、この作品をよろしくお願いします。 (2019年5月18日 13時) (レス) id: 4a59fda111 (このIDを非表示/違反報告)
さくらかつきのようになりたい← - BEASTも楽しみにしてます!小泉ちゃんがどう活躍(?)するのか…アッダメだ私の脳じゃ思い付かない…!!(←)コホン…体調にも気を付けて、作者さんのペースで更新して下さい!(← 何か上からで済みません…!!)我々読者は何時までも待ち続けております!!長文失礼しました! (2019年5月17日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もこすけ | 作成日時:2018年6月9日 19時