おいしいお話 (ページ1)

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ハンバーガーセットページ1

たかいの

「これで俺って分かんないでしょ」
「分かる」
「まぁ夜だし」
「ネットニュースになったら」
「アイドルのドライブスルー何が面白いんだよ」
「面白いわ」
「確かに」

ケケっと伊野尾くんは笑う。
マスクの下の笑みさえ透けて見えてしまいそうなほど愉快に。
メガネの下の愛らしい目じりも下がっている。
アラサーのアイドルがジャンクフードのドライブスルーをするかどうか話し合ってる。
今チキンナゲットが安いんだってと呟いたのは伊野尾くんの方だった。
カロリーと反論しようとした俺を見透かして、夜の運動まで付けてきた。
彼のプランはもう組まれているようだった。

「俺ハッピーセットにしようかな」
「オモチャ、なにこれ、」
「ミニオン」
「好きだったっけ」
「映画見た事ない」

また彼は楽しそうに笑う。
結局ミニオンにするらしい彼は食べる気あるのかないのか。
サラダと頼むチキンナゲットのバリューセットはなかなか夜には重そう。
でも伊野尾くんは結局ぺろりと食べるんだと思う。

「で？」
「で？って？」
「ドライブスルー、いいの？」
「行く気満々じゃん」

サングラスを下げて返事をすると嬉しそうにシートベルトを締めた。
こんな感じだったな、子供の頃、ポテトとハンバーガーを食べる時のドキドキ。
こんな仕組みだったのかと少し緊張しながら注文して受け取り口へ車を進める。
その間伊野尾くんはまた楽しそうに身を乗り出したりしている。

「下がっててよね」
「なんで」
「伊野尾くんもろ伊野尾くんだから」
「どこがあ」

甘えモードに突入した伊野尾くんをたしなめようとしたら出来たと呼ばれる。
さすが、ジャンク、と思わず息が漏れた。

「下がっててね、いい？」
「はぁーい」