ハートの海賊団中心短編集【ONEPIECE】 (ページ12)

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｢…やっていい事と、やってはいけない事の分別くらいちゃんとしなさい｣

普段何をされようが動じない私の、殺気を漂わせて睨みつける姿に慄いたのだろうか。
じんわりと瞳に涙を浮かべてふるふると身体を震わし、唖然とこちらを見上げている。

｢この海のど真ん中、食料がどれだけ貴重かっていうのが分からないわけ？｣

航海はいつ何が起こるか分からないし、一週間程度で次の島へと辿り着けるかなんて分からない。
最悪一ヶ月掛かってしまうことだってある。
そうなれば、どんどんと食料など底を尽いていき死活問題となるのだ。

それなのに…と、床に落ちたものへと視線を向ける。
今日の昼食の当番は私で、毎度おなじみの握り飯を作り配膳していた。
彼女の前へと皿を置いてやれば、それを故意に彼女がひっくり返したのだ。
なんでも、私の作った飯はマズイと、こんな質素なもの食べる気にならないだとか。
ふざけんな、これでもいつものおにぎりが美味しく食べられるようにと具材や調理法など色々工夫しながら作ってるわよ。

まぁそれは置いといて、だ。
食べ物を粗末にするなど私には耐え難いことだった。
ジッと何も言わず睨みつけてやれば、ふるふると身体を震わせる彼女の瞳は徐々に恐怖の色に染まっていく。
シンとした食堂内。
キャプテンも他のクルーも何も言わず成り行きを見ていたが、それを見兼ねたペンギンが間に割って入ってきて私の肩をポンと叩いた。

｢はいはい、そこまでにしとけ。大事な食料を粗末にするのは悪いが…お前の本音は？｣
｢いらないなら私が食べたかった！！！｣

バァンッ！とテーブルを叩けば、彼女はえっ…とまた唖然とした顔になる。
隣のペンギンは、やっぱりなと言ってへらりと笑った。
他のクルーたちも死活問題は建前で、本音は違うとわかってたから何も言わなかっただけ。
ベポなんて食べ物の恨みって怖いね～だなんてぽやぽやと呑気だ。

｢いつもいつも私がどれだけ我慢してるか知らないでしょうねっ｣

私は人一倍と言わず、何倍も大食らいなのだ。
そんな私が毎日満足するまで食べていればあっという間に食料なんて無くなっちゃうから、いつもみんなと同じ量で我慢我慢我慢して、島に着いた時に飯屋でその我慢を発散させるの。
だから捨てたり粗末に出来る飯があるのなら、私が食べたいし許せない。
泣きたいのはこっちだ。