1.◇With ページ17
久々に外に出たかと思ったら変な車に乗せられ、着いた先は極寒の地だった...というのが向井の記憶である。
比較的平穏な気候だった9区からは想像ができないほど荒れた天気だった。肌を刺すような冷気にびゅうびゅうと吹き荒れる雪。すぐにサナトリウムに移ったが、車から内部までの移動が地獄だと思った。
そんなサナトリウムもすぐ地獄だとわかり、外の世界などなんてことはなかったんだなと気づいた記憶もある。
些細な情報も全てかき集めて資料をまとめる。阿部の頭脳もあってすぐに完成した作戦は全員を納得させた。
「ラウがどんな状況かはわかんないからさ、拠点にある分の薬全部詰めとくよ。」
「念の為な、念の為。」
「混ぜちゃいけないものもあるからちゃんと読んでよ!?」
ごっそりカバンに詰めようとするリーダーと最年長に阿部がしっかりと釘を刺す。
「インカムの調子もバグったらあかんからな...ちょっと確認させてな〜。」
そう言って全員分のインカムを借りて工具箱を取り出した向井に、宮舘が「手伝うよ」と言って隣に座る。
試しにテストとしての会話を何度か続ける。知らないうちに劣化していたのか、赤い印のついたそれをバラしてみる。
「康二」
「んー?」
「全部背負おうとしなくていいから。」
ドライバーを掴もうとした手が止まった。相変わらず変わらない表情で機械をチェックし続ける宮舘。
「...何言っとんの?」
「見てたらわかるんだよ。
自分の故郷の地区だからって全部康二がしようとしなくてもいいんだよ。」
「いやぁ....そんなことは」
「まあ1番背負おうとしてたのは目黒なんだけど。十分に『影踏み』が出来るかわからない今、目黒の分も背負って頑張ろうとしてんだよね。
気持ちは分からなくもないけど、ちょっとぐらい分けてくれてもいいんじゃないかなって。」
目黒がベッドで眠っている傍で、向井はただただ考え続けていた。
ーめめは自分のせいやと思ってるやろうから、そんな事ないって伝えなあかん。ラウールがおるかもしれん場所を1番知っとるのは俺やから、なんとか俺が先導して、脱出経路も俺が1番詳しいから確保して...
「誰か1人がなんとかしなきゃいけない状況なんかないから。
何のためにこんだけ人数いると思う?」
ふと目が合って、宮舘は少しだけ微笑んだ。
...じんわり目尻があったかくなってくるのに耐えるように唇をぐっと噛む。
「.......ダテ、好き...ハグしよ」
「ちょっと離れてもらっていい?」
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もえなっとう(プロフ) - 藤菜さん» こんばんは!いえいえ全然大丈夫ですよ!?いつもありがとうございます! (2021年1月28日 20時) (
レス) id: 9d4a7bc2ed (このIDを非表示/違反報告)
藤菜(プロフ) - こんばんは！余計な事を言ってしまってすみませんでした！続きを楽しみに待ってます！ (2021年1月28日 19時) (レス) id: f78a68b7f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もえなっとう | 作成日時：2021年1月28日 18時
