ノスタルジア (ページ6)

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虚無感に襲われながら電車に乗って最寄りの駅に着く。

とぼとぼ歩いていると頬にひんやりとした水の粒が落ちてきて雨が降ってきたんだと気付いた。

傘なんて持っていないし、焦って早歩きになるけど私の鈍足を嘲笑うように雨は強くなるばかり。

前髪は水が滴ってきたし、服は既に色が変わっている。

今更、足掻いた所でもう変わらないだろうと悲劇のヒロインになったような気分で水が溜まっていく地面を歩いた

頬に伝うのが涙か雨か分からなくて、都合が良かった。

「ちょっとアンタ！何やってんの！」

遠くから悲鳴のような女の人の声が聞こえた、と思ったら。

「…えぇっ」

あの、弁当屋さんから出てくるおばさんが私の姿を見てギョッとした顔で傘を持ったまま早足で焦るように近付いてきた。

「傘もささないで風邪ひくよ！こっちおいで！」

私びしょびしょの腕を躊躇うことなく引くとお弁当屋さんの入口、屋根がある場所まで引っ張った。

されるがままに驚いていると奥にあの眼鏡の店員さんと目が合って「あ」と驚いたように目を丸くした。

「ちょっとホクトくん。タオル貸してあげて！もう店仕舞いでしょう？私今から出かけなきゃなんないから！頼んだよ！」

そう言ってお弁当の袋を提げたおばさんはそそくさと雨の中を早歩きで行ってしまった。

取り残された私と、おばさんの勢いに唖然とした”ホクトくん“と呼ばれたその人。

「っ、とりあえずこっち」