ノスタルジア (ページ4)

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気付けば帰路に今日も足はあのお弁当屋さんに向かっていた。

スマホであのお弁当屋さんを調べてみても1件もそれらしき店はヒットしなくて最近にできた店なのかな、なんて。

私の夢、とかじゃなかったよね？なんて馬鹿なことを考えているとちゃんと今日も光は付いていて何故か妙にホッとした。

「…こんにちは、」
「あ、どうも…いらっしゃいませ」

今日も前回居た眼鏡の店員さんは居て、私に気付くと読んでいた文庫本をサッと下にしまって小さな声で挨拶した。

今日も鮮やかなお弁当たちがショーケースに並んでいて目移りしているとハッとある事に気付いてバッグの中を漁る

「…そうじゃん」

財布を忘れたことを今更思い出した、店員さんの顔を見ると不思議そうに私の顔を見ていて。…あー、気まずい。

「すいません、あの。電子マネーとかって」
「使えないですね」
「ですよねぇ…」

…食い気味にそう言われて、撃沈。

申し訳ないけど今日は諦めよう。そう思って「また来ます」と控えめに頭を下げて振り返ろうとすると店員さんが「あっ」と声をあげた

「あの、よければこれ」

とガサガサと差し出された袋。恐る恐る受け取って中を見ると見た事があるパックがひとつ、揚げ物とそれぞれ彩りのおかずと五穀米、立派なお弁当だ。

「カニクリームコロッケなんですけど、試作品で。…口に合うか分かんないですけど良かったら、食べてください」
「えっ、でも」
「…カニクリームコロッケ嫌いでしたか？」

躊躇う私に、不安げに私の顔を覗き込むようにそう言うから。

「いや！大好きです！」

思わず勢いよくそう言ってしまった。店員さんはポカンとした顔をして固まったあと、柔らかく笑った。

「よかったら感想、…聞かせてください」