【ht】ひとつで ページ7
髪を切った。
理由は単純で彼の反応が見たかったから。
いつも楽しそうに私の髪で遊んでいる君だから、悲しんだり、怒ったりしてくるだろうか。
それともいつもの優しい笑みを浮かべて、似合ってると言ってくるだろうか。
楽しみな反面、似合ってないと言われたらっていう不安もあって、美容室を出てはや30分、彼に美容室行ってきたの文字を送るのを迷ってる。
だって嫌われたくないじゃん?
すっかり冷めてしまったカフェオレを飲み干して意を決する。
いざ、尋常に__
勢いよく繰り出された人差し指がスマホの画面をタップすると、シュッという音ともに『美容室行ってきたの!』の文字が出現する。
無事終わったミッションにほっとしていると、彼からの反撃がくる。
『は?既読つくのはっや』
おもわず小声でもらしてしまうほど、効果はバツグンだった。
え?仕事中だよね?
「染めたの?プリンって言ってたもんね」
まぁ染めもしたよ、確かに
『お仕事お疲れ様。帰ってきてからのお楽しみ!』
「ありがとう
え?そんな奇抜な色にしたの?」
メール越しでも困り顔をしてる彼の様子が分かる。
『内緒!』
そう送ってスマホの電源を落とした。
家に帰ってから夜ご飯を準備して、いつも通り家事を熟す。
お風呂が沸いたタイミングで丁度ご飯も炊きあがって、彼の帰りが何時になるか考える。
今日も遅くなるかな?先にお風呂もらっちゃおうかな
1人で唸っていると玄関からガチャガチャ、音が聞こえた。
え、早くない?いつもより1時間は早いよね?
驚きながら玄関まで行くと、寒そうに鼻までマフラーに填めた彼と目が合った。
『おかえりなさい。早かったね』
彼から鞄とコートを受け取ろうと手を伸ばす私に「…うん」と反応の悪い彼。
『…?どうしたの?』
「…髪切ったの?」
あーね?
『うん。どうかな?』
毛先をくるくると巻き付けて遊んでいると、急に感じる温もり。
『…?らんちゃん?』
何も返さない彼と驚きを隠せない私。
「…かわいい」
少しして耳元で呟かれたその言葉は多分この距離じゃないと聞こえなかったと思う。
『ぁ、ありがとう』
動揺と照れで声が揺れた。
「染めるだけなのかなって、仕事頑張ってよかったぁ」
心底なんて言いたげな彼に良かったと眉を下げながら、戸惑いで回せていなかった腕を彼の背中にそわす。
髪の毛ひとつにこんなに感情を動かしてくれる彼に驚いて、けどどうしようもなくそんな彼に嬉しくなった。
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杏夏(プロフ) - 山田の家さん» レス遅くなって申し訳ありません。コメントありがとうございます。好きだなんて私にはもったいないお言葉、大変痛み入ります。まだまだ 月が綺麗ですね は続きますので楽しんでいただけますと幸いです。 (2020年11月7日 18時) (レス) id: 516edf94d7 (このIDを非表示/違反報告)
山田の家 - 続編おめでとうございます!あぁ、やっぱりすんごい好きです。 (2020年10月18日 19時) (レス) id: 9efffd34d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:杏夏 | 作成日時:2020年10月18日 19時