大嫌い ページ20
「…もしかして、キスされちゃうかも〜!なんて、思いました?」
手を離しながら、可愛らしい声でバカにしたように私の真似をする。
「するわけが無いでしょう。…貴女みたいなヒト、私、大嫌いなので。では。」
ピシャッ
去り際に目的だったであろう目薬を手に取ると、そのまま出ていってしまった。
大嫌い、と直接あのような目で言われるのはなかなか心にくる。
確かに、身体中にキスマークのある女は良くないとは思うが、でも、だからってあんなに言わなくてもいいではないか。
悲しさ半分、怒り半分の状態で服を脱ぎ捨て、また誰が来てもいいようにタオルを上にかけ浴室のドアを開けた。
浴槽は至って普通のもので、水垢がついている鏡を見て掃除が大変だな…とか考えながらシャワーを浴び、お湯に浸かる。
「はぁ〜…」
あたたかい。
心までポカポカするような、そんな感覚になる。
お風呂ってこんなにも気持ちのいいものだったっけ。
しばらく浸かっていると、先程のレオスさんを思い出してムカムカしてくる。
「何なのあの人!普通、面と向かって「大嫌いなので」とか言う…?!」
パシャッと水面をあの高身長に見立てて叩きつける。
あのレオスさんの脳天にげんこつを振りかざしているようで、実際には何の得にもならないのだがスカッとした。
バシャバシャと少し暴れた後、我に返る。
「はぁ〜…」
感情が忙しい。今度はなんだか悲しくなった。
怒りを水に叩いても何も変わらない。嫌われているらしいし、この家をいつか出ていくことは一応、考えておくべきだろう。
今日まだ1日目だけど、あんなに楽しかったのにな…
ここにいる人達は、誰も私の素性を聞いてこなかった。それでいて、とても優しくしてくれた。
でも、レオスさんに言われてしまうのも当然か。
自分の肌を見やる。
思ったよりもくっきりとしている、その印。
身体に残るこの痕がずっと消えないんじゃないかという錯覚に陥り、怖くなる。
両腕をぎゅっと握りしめた。
その時、ローレンさんの言葉を思い出す。
「大丈夫だって、よく頑張ってるって、自分の事は、自分で褒めてやるんだよ」
自分を褒めてあげるなんて、考えたこともなかった。
頭の上に手を置いてみる。
そのまま、ポンポンと2回。
「よく頑張ってるよ、A」
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頭華(プロフ) - くらげさん» えへへ…コメントありがとうございます♡ (2021年10月5日 22時) (レス) id: f03d065939 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - ヒィ…おそろしい…axくん…まさかここでクローンネタがくるとはって感じです想像の斜め上をいかれた流石すぎる…本日もお疲れ様です (2021年9月28日 17時) (レス) @page41 id: 8ae060a4c4 (このIDを非表示/違反報告)
頭華(プロフ) - Fineさん» コメントありがとうございます!勝手に脳内で博士の声で再生してしまいました笑 アクシア君の抱えているものがうまく描写できてたらいいな… 頭抱えて飛んで頂けたら幸いです! (2021年9月28日 2時) (レス) id: f03d065939 (このIDを非表示/違反報告)
頭華(プロフ) - くらげさん» ありがとうございます!重たいですよね笑表情筋ぶっ壊れてほしいですねぇ〜 (2021年9月28日 1時) (レス) id: f03d065939 (このIDを非表示/違反報告)
Fine(プロフ) - あぁぁあぁぁあ何ですかこれぇ!?!?!?ア゙ア゙ア゙重くて好き〜こんなの待ってました〜!!!!私の心臓が持ちませーん!いつも更新楽しみにしてます!アクシア……君は一体何を抱えているのかい……それ次第では私は頭抱えて飛ぶぞ……。 (2021年9月26日 16時) (レス) @page37 id: f4f4fca585 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:頭華 | 作成日時:2021年9月5日 2時