アメフリレインボウー2ー (ページ49)

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#49 After the rain ページ49

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「うん。いい人だよ、とっても。」

『あいつがおれば安心かもしらんな。』

永瀬くんの言葉も、自分自身の言葉も

ずっと何かが欠けていて

それでもお互いが決して探ろうともせずに

解りあったように言の葉は絡んでいく。

流れるように交わされていく心地いい会話の中で

今なら何でも言えてしまうような気がして。

「私ね、ずっと永瀬くんが苦手だった。」

『は！？』

「でも今は、尊敬してる。」

『なんやいきなり。』

ほんの欠片かもしれない。

だけど永瀬くんを近くで見て、知って。

彼と過ごした時間は

私のモノクロの毎日をカラフルに色づけていった。

「だからずっと応援してる。」

遠くから見守ることしかできないけれど

もう、表舞台でキラキラと輝く永瀬くんしか

見ることはできないかもしれないけれど

私はこっそり、君の一番のファンでいるよ。

＂永瀬廉＂という、一人の人間のファンで。

独特な大きな笑い声も

たくさん皺を作って笑う無邪気な笑顔も

艶やかにキリッと上がる口角も

柔らかくて高く澄んだ声も

爽やかに放つせっけんのような空色の香りも

不器用ながらに与えてくれる確かな優しさも

ぜんぶ、大好きだったから。

『なあ。俺、頑張るわ。』

「うん」

『自信があるわけちゃうけど。』

「うん」

『だからAちゃんも、笑っててな。』

まるで、これで本当に終わりみたい。

「永瀬くんこそ。なに、急に。」

『俺の仕事は人を笑顔にすることやからな。』

「そっか。そうだね。」

すべての砂が流れ切るまで、あとほんの少し。

私は、永瀬くんにずっとずっと笑っていてほしい。

気まぐれで理不尽な雲に覆われようと

彼を誤解する人が現れようと

どんなときも、真っ直ぐな永瀬くんのままで。

「永瀬くん。」

『ん？』

「ずっと、そのままでいてね。」

それが、最後に彼に送る、私のたった一つの願いだ。

ふふっ、と小さく笑ったあと

「おう」と力強く返された返事が

鼓膜を伝って心の奥底に沁みていく。

『…じゃあ』

「うん」

静まり返った受話器の向こう側。

細く細く流れ続けていた砂の最後の一粒が

プツリと音を立てて、ゆっくりと落ちていった。

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