アメフリレインボウー2ー (ページ41)

今日:8 hit、昨日:1 hit、合計:58,957 hit

#41 pouring ページ41

.

静まり返っていた空間に

不意に鳴り出した音にハッとした。

………雨だ。

振り返ればそこに映し出された景色は

まるで今の自分の心を表しているような

強く地面を打ち付ける土砂降りの雨。

思わず鼻から小さく漏れた乾いた笑い。

今日は雨なんて降るはずのなかった空は

惨めな私をわざわざ嘲笑いにきたんだろうか。

いや、きっと味方してくれているんだ。

一緒に泣いてくれているんだ。

だったら流してもらおうじゃん。

とめどなく溢れ続ける涙も

これまで過ごしてきた彼との日々の思い出も。

.

ゆっくりと立ち上がって

降りしきる雨の中へと足を踏み出した。

透明の針は頭上から容赦なく降り注ぐ。

痛い。冷たい。痛い。

胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。

何も流してなんかくれない。

ただ虚しく雨に打たれ続けるだけ。

誰も見ていない涙を、隠してくれているだけ。

あっという間に肌に張り付いた制服も

ぺたんこになった髪の毛も、そこから滴る雫も

これ以上私を濡らしたって何も変わらない。

ここまで黒く染め尽くせば

どれだけ痛みを重ねたって何色にも変わらないから

もう好きなだけ濡らせばいい。

きっとこれ以上、辛くも悲しくもならないから

好きなだけ降らせばいい。

天から下ってくる埃臭い光の矢を

この涙が枯れ果てるまで。

.

痛みが、和らいだ。

頭上で鈍い音を立てながら

私を守るように雨を弾いていく透明の膜。

鼻を掠めた、優しい匂い。

『何しとるん？』

アスファルトを叩きつける激しい雨音の中で

微かに耳に届いた透き通った声に

足を止めそっと首を回したその先に

「……な……がせく……」

滲んだ視界の向こうに、彼はいた。

.