アメフリレインボウー2ー (ページ31)

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#31 pouring ページ31

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いつかの永瀬くんの言葉を思い出した。

──みんなが持ってる普通は俺が求めても手に入らん

彼が求める自由は

もうずっと前から届かない場所にあるんだ。

それは日常生活のみならず

彼が生きる世界では常に縛られる。

そんな厳しい現実を突きつけるように

永瀬くんは落ち着いたトーンで言葉を紡いでいった。

『そもそも俺にも非はあるしさ。

例えば俺が何か言ったところで変わることって

ほぼほぼ無いに等しくて、どっちかというと

むしろ火に油注ぐことになんねん。

真実がどうであれ信じる信じないは人それぞれやろ？

出るもんが出た時点で

受け手の感情をひっくり返そうなんて無謀やし

そこに使うエネルギー分の対価もないし

…ってまあ、ごちゃごちゃ言うても結局

上からストップかかっとるって話やねんけどな。』

淡々と話す永瀬くんはやっぱり

こういうことに慣れているのだろうか。

時に言いたいことを言う権利さえ与えられず

間違いを間違いだと主張することもできず

もどかしい思いを抱えながらも

仕方ないと割り切って目を瞑り

様々な感情に心を掻き回されながら

たとえどんな状況に置かれていたとしても

正しく作り上げた＂求められている自分＂で

光の中で輝き続けなければならない。

本当はどこかでわかっていた。

きっと、釈明とか弁明とか

そんなものが通用する世界じゃないって。

だけど、それでも何か…

「私にできること…ない？」

どうしても納得がいかなかった。

永瀬くんに冷ややかな目が向けられることも

ただ黙っていることしかできないことも。

そんなふうに思う私は、まだ子供なのかもしれない。

『鎮火されてくのを待つしかない、かな。

Aちゃんにはほんまに申し訳ないけど

このまま何も言わんといてもらえると助かる。』

悔しいけど

きっと、それが大人の選択なんだ。

永瀬くんのいるもう一つの世界の＂普通＂なんだ。

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