アメフリレインボウー2ー (ページ4)

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#4 nimbostratus ページ4

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机の上で震えていたスマホの画面に目をやれば

そこに表示されていた名前に

心臓が激しく波打った。

電話に出ようか迷いながら

しばらくすれば切れるだろうと僅かな期待なんてして

とりあえず待ってみたものの鳴り止む気配もなく

やけくそで応答ボタンを押してスマホを耳に当てた。

「もしもし」

どうにでもなれ。

どうせそのうち顔は合わせることになる。

逃げていたって仕方がない。

見えない何かに負けまいと

自分にそう強く言い聞かせるように握りしめた

スマホの向こうから聞こえてきた声は

拍子抜けしてしまうほど鮮やかに明るいものだった。

『あ、Aちゃん？店長から聞いた？』

「えっと…うん、シフトのこと？」

『そうそう！ラッキーっちゃラッキーなんだけどさ』

私には、最高にラッキーでしかなかったのだけど。

その先に続く言葉はどんなものなのか

頭の中で考える前に髙橋くんの声は流れてくる。

『バイトの予定だったから暇になっちゃって』

嫌な予感がした。

『明日、一緒にどっか行かない？』

つい最近までなら

少し考えてから、了承の返事をしていただろう。

急に予定が空いてしまって、かといって

一度断った友達の誘いに食い込むのも気が引けて

彼氏もいない。好きな人がいるわけでもない。

バイト先の比較的仲の良い好印象の男の子と

こうして同じ時間に暇ができてしまったのだから

一緒に遊びに行ったっていいじゃない。

そう思っていたはずだ。

それなのに

その髙橋くん相手に今何の言葉も返せないのは

どうしてもあの日の彼を忘れられないから。

だけど髙橋くんは、電話の声を聞く限り

何も気にしている様子はなくいつも通りで

あのキラキラの笑顔さえ想像できるほど。

『あれ？Aちゃん？聞こえてる？』

はっきりと聞こえていた声を

ほんの数秒の間、電波のせいにして

無言のままぐるぐると頭の中で必死に考える。

『Aちゃん？』

「ん？あ、うん、聞こえる」

『どう？明日』

姑息な手段で稼いだ短い時間で私が出した答えは

「うん。……いいよ」

私が本来知っている

これまで通りの彼の姿を、信じることだった。

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