アメフリレインボウー2ー (ページ19)

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#19 nimbostratus ページ19

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再び重ねられた視線に、胸が轟く。

徐々に下ろされていく彼の視線が

口元に移されたとき、ぐっと息を呑んだ。

ボフッ

え……？

突如すべての臭覚をかっさらっていった

せっけんのような、爽やかで少し甘い、香水の香り。

パーカーに袖を通した永瀬くんの左腕に

口を覆われたかと思えば

そのまま左右に振られてゴシゴシと擦られる。

「んー！んんー！」

痛いくらいに、苦しいくらいに続いた謎の行為は

それでも不思議と、嫌だとは思わなかった。

やっと離れた香りも温もりも

名残惜しいとさえ思うほどに。

『これでなかったことにせえよ』

「…え？」

『そんな単純なもんやないってのはわかってるけど』

そう言って一歩後ろに下がった彼は

少し照れくさそうに俯いた。

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もしかしたら

本当はすごく単純なことだったのかもしれない。

だって、あんなにも頑なに付いて離れなかった

呪縛のような胸の傷みが

本当に消え去ったような気がしたんだ。

やっぱり君は、魔法使いみたい。

髙橋くんの前で涙が溢れそうになったあの時

永瀬くんの顔が浮かんだ理由もわかった気がした。

びっくりするくらい素直でまっすぐで嘘がなくて

そのくせ自分の気持ちを伝えるのは下手くそで

口は悪いし意地悪だけど

その心の奥のど真ん中にあたたかいものを持ってて

ここぞってときにはちゃんと与えてくれる

永瀬くんの優しさが、そこにいてくれる安心感が

心地よくて、好きなんだ。

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