アメフリレインボウー2ー (ページ11)

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#11 nimbostratus ページ11

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チリン、と鈴の音を鳴らして開かれたお店の扉。

表に垂らしている札は既に

＂準備中＂に切り替えたはずだけど

間違えて入ってきたお客さんだろうか。

「すみません、今日はもう……」

作業していた手を止めて顔を上げたとき

目にした姿に、思わず言葉を失った。

『おぉ！おった！セーフ！』

得意気に片方の口角をクイッと上げて

その色素の薄い瞳に私を映し出す。

いつの日かのように突然パン屋に現れた彼は

細身のスキニーパンツにTシャツ

薄手の黒いパーカーを羽織ってそこに立っていた。

いつぶりだろう。こうして顔を合わせるのは。

懐かしくも思える姿と

胸の奥から込み上げてきた熱いものに

ぐっと息を呑み込んだ。

「……なんで……？」

彼がここにいる事実に

理解が追いつかず硬直していれば

『やーっと今日休みやってんけど

いろいろバタバタしとってこの時間なってもうたわ』

入口の側からこちらに向かって足を進めてきた彼は

私が作業をしているレジの前でピタリと止まった。

「えーっと…パンならもうなくなっちゃったけど…」

『は？この時間にわざわざ俺が

パン屋にパン買いに来るわけないやろ』

そもそも俺、米派やし。

ちょっと怒ったように吐き捨てられた台詞に

私は「そうなんだ」と、呟くように返事をした。

「それじゃあ、どうしたの？」

他に理由なんて思い当たらずに首を傾げれば

彼は人差し指で軽く頬を掻きながら

視線を泳がせてこう言った。

『この前さ、見かけたのよ。その～、仕事場で』

「え？」

『Aちゃん、おったやろ？テレビ局のイベント』

重なり合った視線。

突如蘇るあの日の記憶。

何かを見透かされているような

まっすぐに私を見据える澄んだ瞳に

大きく揺さぶられた心が

一瞬、呼吸を忘れさせた。

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