#find out.8 ページ8
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辿り着いた水族館の目の前
大きなイルカのオブジェの前を通り過ぎると
アーケードの入り口を見上げて廉が立ち止まった。
『とりあえずこっからやな』
繋がれたままの手を軽く握り直すと
薄暗い空間の中へと足を踏み入れていく。
最初に迎えてくれたアーチ状の水槽は
一面が煌びやかに蒼く輝く空間の中で
たくさんの種類の魚が自由に動き回る姿が見られる
幻想的でとても綺麗な光景だった。
『お！エイおるやん』
「エイ？」
『おん、ほらあそこ』
なんでエイ？と思いながら
廉が指差す方向に目を向けると
平べったい大きな体にちっちゃな顔を貼りつけた魚が
細い尻尾のような物をぶら下げて優雅に泳いでいた。
『Aにそっくりやな』
ちょうど真上を通り過ぎようとしていたエイの顔を
覗き込むように見上げながら廉がニヤッと笑う。
同じように見上げた先のエイを見つめてみるも
一体どこが似てるのかわからなかった。
なんか、かわいい顔はしてるけど。
『なんも考えてなさそうな間抜けな面がそっ…
ったぁぁあああ！！！』
早くも今日二回目の攻撃を背中に喰らわせると
やっぱり大袈裟に痛がる廉が目をまん丸にして
「こっわ…」なんて呟いてる。
スタスタと先に進む私の後ろを追いかけてくる
廉の気配を感じながら、背中を向けている間に
自然とこぼれる笑みに思いきり頬を緩めた。
いつもと変わらない二人でいられる時間が
嬉しくて、楽しくて、今だけは
胸に抱える不安や葛藤は和らいでいる気がした。
『なに笑っとるん？』
「へっ！？ わ、笑ってないし」
結局見られてしまったらしいニヤついた顔を
慌ててひっこめて再び足を早める。
『いや、笑ってたやろ今』
「笑ってないよ！うるさいなぁ」
廉が、隣で笑ってる。
ただそれだけなのに
ずっと見てきたあたりまえの景色のはずなのに
こんなにも嬉しくて、切なくて、苦しくて
胸が熱く張り裂けそうになるのは
すぐそこに迫りくる何かに
向き合わなければならない自分のその答えに
気づきはじめていたからかもしれない。
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7日目の蝉(プロフ) - lemon09さん» lemon09さんコメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです…！そう言ってくださる方がいて本当によかったです。読んでくださってありがとうございました！ (2020年12月10日 22時) (
レス) id: 8841233121 (このIDを非表示/違反報告)
lemon09(プロフ) - 急に終わってしまって寂しくなっちゃいました（笑）でも面白かったです、お疲れ様でした。 (2020年12月9日 4時) (レス) id: 2975f730a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2020年3月12日 1時
