#find out.27 ページ27
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身体中を覆う目に見える傷痕は、まだまだ痛々しい。
「私のせいで…ごめんね」
ありがとうの気持ちと同じくらい
申し訳ない気持ちでいっぱいで
その思いも心の底から口にすれば
全てを包み込むような優しさの詰まった表情で
平野くんはゆっくりと首を横に振った。
『こんな傷、すぐ治るし。
こんなんでAちゃんを救えたなら安いもんだよ』
一週間経っても消えない傷なのに
ときどき痛みを我慢するかのように顔を歪めるくせに
またそうやって平気なフリをして。
いつもそう。
自分は何ともないみたいな顔をして
笑顔を浮かべながら、君は小さな嘘をつく。
誰かを守るための嘘を。
でもね、平野くん。
そんな優しさ、私は嬉しくなんてない。
だって、
「ねぇ、平野くん」
君の笑顔が私に幸せをくれるように
「もう、何も我慢したりしないで」
君が辛い時には
その悲しみを一緒に背負ってあげたいから
「ひとりで抱え込んだりしないで」
喜びも悲しみも、笑顔も涙も、分かち合いたいから
「無理に笑おうとしなくたっていいんだよ」
ぜんぶぜんぶ、受け止めるから。
もちろん平野くんにはずっと笑っていてほしいけど
笑うなら、心からの幸せな笑顔がいい。
曇りのない、キラキラの眩しい笑顔がいい。
「辛いときは辛いって言えばいいし
悲しいときは思いっきり泣けばいい」
全部、見せてよ。
壁なんて隔たりしないで
見えないように隠れてしまい込んだりしないで。
「誰も、平野くんを責めたりなんかしないから」
目の前で驚いたように大きく見開かれた瞳を
私はただまっすぐに見つめ返す。
しばらく黙っていた平野くんは
何かを考えるような素振りをみせたあと
ふわっと頬を緩ませて、静かに口を開いた。
『Aちゃんの声がさ、聞こえたんだ』
「…え？」
突然の言葉に驚きながらも耳を傾ければ
平野くんはどこか一点を見つめながら
少し掠れた声をゆっくりと重ねていった。
『俺ね、さっき夢をみてたの。
暗闇の中で、ひとりぼっちで
どうしたらいいのかわからなくて』
頭に思い浮かぶ景色は、真っ暗で冷たい空間。
だけど
ひとつひとつ思い出すように言葉を紡ぐ平野くんは
不思議なくらい、穏やかだった。
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7日目の蝉(プロフ) - lemon09さん» lemon09さんコメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです…！そう言ってくださる方がいて本当によかったです。読んでくださってありがとうございました！ (2020年12月10日 22時) (
レス) id: 8841233121 (このIDを非表示/違反報告)
lemon09(プロフ) - 急に終わってしまって寂しくなっちゃいました（笑）でも面白かったです、お疲れ様でした。 (2020年12月9日 4時) (レス) id: 2975f730a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N | 作成日時：2020年3月12日 1時
