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#memory.6 ページ6

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その日は雨だった。

朝、慌てた様子で教室に入ってきた彼は

いつものサラサラの髪に今日は水滴をつけていて

『おはよー。雨だねぇ』

綺麗に染められた暗めの茶髪から

ポタポタと伝うそれを払うように

頭をブンブンと振る彼に尋ねる。

「あれ？傘は？」

『ん？なくても大丈夫かなーって思って！』

「家近いの？」

『歩いて15分くらい！』

「いやいや、

大丈夫かなー、の距離と雨量ではないよね」

雨音のする窓の外を眺めながら言うと

えへへ～、なんて呑気に笑う彼について

これまでわかったことは

彼はとてもよく笑う。

そしてやはりどこか抜けている、天然らしい。

それから

袖をまくったYシャツから覗く逞しい腕と

今日は雨に濡れたシャツが肌にピタッとくっついて

露わになっている、厚い胸板。

あどけない笑顔とは対照的に

その体つきは筋肉質で、がっしりしていて

男らしいってこと。

それから───

『でも俺、雨に降られるの嫌いじゃないんだ』

不意に、静かに

囁かれるように、私の耳に届いた言葉。

『嫌なこととかさ、辛いこととか

悲しみも、苦しみも、ぜんぶ

流してくれるような気がするから』

彼はときどき、それに触れたら

消えてしまうんじゃないかと思うほど

切ない表情をみせるってこと。

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