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#memory.28 ページ28

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『ようわからんけど

何もせんかったら今のまんまなんも変わらんやろ』

廉の言葉が、容赦なく胸に突き刺さる。

『そいつがそんなんやったら

Aがどうにかするしかないやん』

心のどこかでわかっていたはずの答えを

廉は簡単に言葉にしていく。

いつもありのままで、嘘のない、まっすぐな廉。

『がんばれ』

そんな廉の言葉に背中を押されるように

次の日、早めに学校へ行って

少し緊張しながら自分の席で彼が来るのを待った。

それぞれの会話や挨拶が教室中を飛び交う中

『おはよー』

ずっと待っていたそのハスキーな声が

教室の後ろのドアの方から聞こえてきたとき

──がんばれ

昨日の廉の言葉を

自分に言い聞かせるように頭の中で繰り返し

祈るように一度ギュッと目を閉じた。

彼が、自分の席へと向かってくる。

急激に高まっていく胸の鼓動を感じながら

勇気を振り絞って後ろを振り返った。

「ひ、平野くん！」

何か、変わるだろうか。

「あの、」

また表情のない顔で、言葉だけ返されるだろうか。

『おはよ！Aちゃん！』

え………？

あの日の出来事がまるで夢だったかのように

昨日流した涙が

廉の優しさが

何の意味もなかったかのように

平野くんは、いつの日かと同じ

眩しすぎるほどの、ふにゃっとした笑顔を

あたりまえのように私に向けてきた。

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