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心の叫び ページ17

この雨が止む頃に、また同じ幸せは訪れるかもしれない。


ならこの雨を止めてくれるのは、一体どこの誰なのだろうか。


あの時は、誰も止めてなんかくれなかったんだ。


この雨が雪に変わった日
止まなかった雪は、確かに私の両親を拐って行ったし


止まなかった雨は__________。


雨は、何を拐っていったんだっけか。


「…風邪、引くよ。」


不意に、誰かの傘が頭上を遮った。


その声に、もう色々な感情を通り越して出やしないと諦めていた涙が


髪から滴る雨粒に混じって、こっそりと頬を伝った。



あぁ。雨は多分、誰も拐っていないけれど


雨が降ると、いつもこの人を思い出す。



「ノ…サカ、くん。」


「大丈夫?」


「…何で。」


こんな時ばっかり現れる彼が。


否、彼の前でばかりこんな気持ちになってしまう自分が
なんだか嫌で、すごく嫌で、苛立たしくて。


「何で、いるの。」


私は両手に拳を握りながら、ただ静かにそう言った。


彼が嫌いだったんじゃない。


どこか、悔しかったんだ。


自分の気持ちを、彼に見透かされているようで。


私は彼のことを、まだ何も知らなくて
その心にどんな感情を秘めているのかすら、全く分からないのに


私ばかりが慰められ、救われていることが


もうどうにももどかしくて。


傘のない日に傘を差し出し
道に迷えば救ってくれて
こちらが避ければいとも簡単にいなくなる。


そんな、あまりにも器用に”自然“を装う彼は


私がただ楽しくて、浮かれてヘラヘラと笑っている時も
友達と賑やかに話をしている時も


ただ哀しい笑みを浮かべ続ける。


その哀しみの解き方が、私には分からないから。

彼の心の中は、どうしたって見えないから。


だから嫌なんだ。
救われるばかりで、彼に一ミリも近づけていない自分が。


「たまたま通りかかったら、君がいた。」


「…嘘だよ。」


「嘘じゃないよ。…花火してたの?」


「どうしていつも、私のことを助けるの。」


ほら、やっぱり。


彼は相変わらず哀しい笑顔だけをそこに浮かべて


「さぁ、何のことかな。」


そんな空虚な回答を私に突きつける。


「ノサカくんは、私の何。どうしてそんなに哀しい顔で笑うの。私たち、どうして一緒にいると涙が出るの。ねぇ、何で__________。」


彼に背を向けたまま
何も考えずに言葉を並べた。


こんなことを言っても、彼を困らせるだけだと思いながら
ただ心の叫びを、直接そこに漏らした。

カミサマ→←終わりは突然に



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橋本アリィちゃん(プロフ) - とても泣けました!こんな感動作品を作って頂きありがとございました!今後とも応援しています!(*´ω`*) (2021年11月4日 7時) (レス) @page39 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
くゆぃ - この物語を生み出してくれてありがとうございます。余命あと1年で、辛くて仕方なかった時、まさに今、イナズマイレブンに出会って、野坂悠馬君が好きになって、あなたの小説を読ませていただきました。いなくなる前に、この小説を読めてよかった。よかった。ありがとう (2021年8月6日 23時) (レス) id: 47b282db84 (このIDを非表示/違反報告)
むい - ほんっとうにこの作品が大好きです!何度も泣かせていただきました。この小説が、命について深く考えるきっかけとなりました。最後に、本当に大好きです。ありがとうございました! (2020年9月7日 14時) (レス) id: b5b9338b39 (このIDを非表示/違反報告)
ふるる。(プロフ) - 初コメ失礼します、ふるる。です!すっごくこの小説好きでした!命って大切だなと思ったし新しい生き方も学びました。完結おめでとうございます! (2020年4月25日 10時) (レス) id: 28f80b2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
岡部 愛(プロフ) - この作品であなたを知り、一気に最後まで読みました。しかし言葉が出てきません。とても好きで、好きだという気持ちをなんと表現したらいいか分かりません。この作品でたくさん泣きました。あなたの他の作品も是非読ませていただきます。 (2020年4月25日 8時) (レス) id: fa9bcb142e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちまる。 | 作成日時:2020年4月4日 9時

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