恋の話 ページ6
だから、君が好きだと言うものなら
僕も好きになれる気がする。
そんなことを、赤い三角形の物体を口に入れながら考えていた。
「ねぇ、あのさ。この間言ってたスイカ持って部屋に来てくれた子って、どんな子だったの？」
君は、容赦なく答えづらい質問を僕に投げかけることが時折ある。
今が、それの良い例だ。
「…自由奔放で、身勝手で。」
だけどその答えづらさと真正面から向き合って
僕なりに、誠実な答えを突き返そうじゃないか。
「ずっと、笑顔で。」
深く考える必要はなかった。
目の前の人を見ながら話していたせいで、“その人” の特徴が流れるように頭に浮かんだからだ。
「肌が白くて、目がビー玉みたいで。」
そうしている内に、僕の意識は “その人” から目の前の君へと移っていた。
それは異世界にいる君ではなく、この世界だけにいる君だ。
だから今の君を見て思うことを、僕は淡々と口に出した。
「夏の…向日葵、みたいで。」
「ははっそうなんだ。向日葵って、元気いっぱいで明るいよね。私も大好き。」
「…うん。」
正直、向日葵の花を「元気いっぱいで明るい」と思ったことはあまりなかった。
そもそも、そんなことを感じられるほど向日葵という対象物について観察をしたこともなかった。
しかし君を見ていたら、不思議とあの花が脳裏に浮かんだのだ。
「…野坂くんは、その子のこと、好き？」
いつもの威勢の良い君の喋り癖はどこに行ったのやら、君は急にそのトーンを落として僕に聞いた。
「好き？」
「恋バナってやつだよ！ははっ、修学旅行の夜みたいだなぁ。」
一度目にその台詞を聞いた時は、恋バナのバナとは一体何の略称なのかと考えた。
しかし、今となればもう分かる。
恋の話ということだろう。
「好きなんでしょ。その、向日葵ちゃん。」
君はいたずらに、そう言って笑った。
君が今、自分で言っていることがつまりどういうことなのかを知ったら
君はあっという間に羞恥に襲われて話を逸らすだろう。
しかし “向日葵ちゃん” の正体を明かすわけにはいかない。
ここは諦めて、好きに笑わせておくことにしようか。
「…分からないけど、嫌いじゃない。好きかと言われたら、そうなのかもしれない。」
「そ…っか。その子には、会わないの？」
君は心なしか、微かにその表情を曇らせてそう聞いた。
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ｶﾄﾗｵ - はじめまして！！もちまるさんの小説に出会えて毎日仕事終わりに読むのが楽しみで仕方ありません。まだ全部読み切っては無いのですが、感動とドキドキの展開を毎日楽しみにしていることだけどうしても伝えたかったのでコメントを残します。 (2020年7月22日 21時) (
レス) id: eccc16e070 (このIDを非表示/違反報告)
miginoaoi(プロフ) - 全部読みました。ボロ泣きしてしまいました…すごく切なくて感動する話ですね。続気が気になりました！今は無理でも貴方様の更新をずっとまちます！ (2020年1月15日 0時) (レス) id: 5d51d334c7 (このIDを非表示/違反報告)
ハニートースト 通称,ハニトン！(プロフ) - 作者様の作品は全て読ませていただきましたが、完全に虜になりました。言葉選びが繊細で、儚くて、思わず世界に入り込んだ気分で読んでしまいます。こちらの小説なのですが、co shu nieというバンドのアマヤドリという曲がピッタリだったので、伝えてしまいました。 (2020年1月6日 19時) (レス) id: b6696be840 (このIDを非表示/違反報告)
聖羅(プロフ) - 初めまして。この小説を読んで泣きました。もちまる。さんの小説がとても大好きでずっと待ってました。これからもずっと応援してます！ (2019年12月24日 23時) (レス) id: 07b14ef242 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ☆(プロフ) - 初めまして。君の脳になりたいの方を読んで此方にきました。私、本や映画を見ても絶対泣かないのに、この小説と君の脳になりたいの小説では泣きました。私は今不登校で、死にたいって思ってたけど、これを見てまだ頑張ろって思えました。何年でも待ってます。頑張れ！ (2019年11月28日 14時) (レス) id: 65ed62dd2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2019年8月12日 21時
