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感情 ページ47

「嘘なんか……ついていない。」


「じゃあ、どうして。」


“もう誰にも、僕みたいな思いはしてほしくないんだ。”


別世界の、僕が言う。


それは確かに事実だけど


この世界の全人類を僕一人が救うだなんてことは不可能だと


本当は最初から分かっていた。


「僕は……君を。」


あの日君に言いかけて、飲み込んだ言葉。


僕は君を、救いたくて。


僕は君と、生きたくて。


なのに何も、叶わなくて。


僕の目の前で、二度も息を引き取った君。


二度も、僕のために死んだ君。


「え…私?」


あぁ、参ったな。


多分、これは涙だ。


「え…野坂くん?泣いてるの…?」


こんなみっともない姿を見せたら
君にもっと幻滅されてしまうかもしれないのに。


「アレスの…天秤は。」


僕は両拳をグッと握って、やっとの思いで声を絞り出した。


「人を、救う。」


ダメだ。感情を制御するんだ。


強いままの自分でいるんだ。


弱い部分をこの人に見せるわけには、いかないんだ。


「僕はそれを証明するんだ。」


涙の止め方すらも忘れてしまった僕が
今更強がろうとしたところで何になると言うのか。


あぁ、馬鹿だな。


僕は本当に大馬鹿だ。


結局、ボロボロと両目からこぼれ落ちる液体を無視して


僕は思うままに喋り続けた。


「誰にどれだけ非難されようと。どれだけ忌み嫌われようと。どんな手を使っても僕は__________。」


君の瞳を真っすぐに見つめて。


感情を全て、曝け出して。


「僕はこんな世界を、変えてやるんだ…!」


頬を伝った涙が、次々と顎から滴り落ちていく。


驚いたのだろうか。君は、何も言わなかった。


「僕は救いたい人を救うんだ。そのために今、この世界を生きているんだ。生きてきたんだ。なのに________。」


脳裏に、違う誰かの前で笑う君の姿が散らついた。


「なのに…。」


君は、僕以外で良くても


僕は、君以外じゃ嫌なんだ。


だって、僕の心臓は


僕の右心房と君の左心房で出来ているようなものなんだ。


君がいなきゃ


ちゃんと生きていけないくらい


弱いんだ、僕は。


本当に弱いんだ。


「どうして君はいつも、僕よりずっと遠いところに行ってしまうの。」


消えてしまいそうな声だった。


こんな柄にもないことを僕が言って
君はどう思っただろうか。


そんなことは分からない。
別に、知りたいとも思わない。

世界を変える→←うまくいかない



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カトラオ - はじめまして!!もちまるさんの小説に出会えて毎日仕事終わりに読むのが楽しみで仕方ありません。まだ全部読み切っては無いのですが、感動とドキドキの展開を毎日楽しみにしていることだけどうしても伝えたかったのでコメントを残します。 (2020年7月22日 21時) (レス) id: eccc16e070 (このIDを非表示/違反報告)
miginoaoi(プロフ) - 全部読みました。ボロ泣きしてしまいました…すごく切なくて感動する話ですね。続気が気になりました!今は無理でも貴方様の更新をずっとまちます! (2020年1月15日 0時) (レス) id: 5d51d334c7 (このIDを非表示/違反報告)
ハニートースト 通称,ハニトン!(プロフ) - 作者様の作品は全て読ませていただきましたが、完全に虜になりました。言葉選びが繊細で、儚くて、思わず世界に入り込んだ気分で読んでしまいます。こちらの小説なのですが、co shu nieというバンドのアマヤドリという曲がピッタリだったので、伝えてしまいました。 (2020年1月6日 19時) (レス) id: b6696be840 (このIDを非表示/違反報告)
聖羅(プロフ) - 初めまして。この小説を読んで泣きました。もちまる。さんの小説がとても大好きでずっと待ってました。これからもずっと応援してます! (2019年12月24日 23時) (レス) id: 07b14ef242 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ☆(プロフ) - 初めまして。君の脳になりたいの方を読んで此方にきました。私、本や映画を見ても絶対泣かないのに、この小説と君の脳になりたいの小説では泣きました。私は今不登校で、死にたいって思ってたけど、これを見てまだ頑張ろって思えました。何年でも待ってます。頑張れ! (2019年11月28日 14時) (レス) id: 65ed62dd2f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちまる。 | 作成日時:2019年8月12日 21時

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