日記 ページ37
そして、僕は
「2021.4.2 今日はあの子の誕生日。お祝いに行けなくてごめんね、野坂くん。何か美味しいものを届けに行きたいと思ってたんだけど、今日は立てそうにありません。」
君の中の、僕を見つける。
「できればもっと、野坂くんと一緒に生きたかった。」
君の過去にいた、僕に出会う。
「野坂くんに、生きて欲しかった。」
息を呑んだ。
どういうことだ。
アレスシステムが育て上げたこの脳を
必死にフル回転させて考えた。
だけど僕の頭が結論を出す前に
その答えは君がくれた。
「2021.6.12 私は4ヶ月前、残り半年という余命宣告を受けました。つまり、あと2ヶ月で私は死にます。
これを読んでいるあなたは今、幸せですか?あなたはちゃんと、笑えていますか?その体に授かり受けた生を、精一杯に生きていますか?」
君らしい問いかけだ。
今なら胸を張って答えられるというのに
もう君には届かないだなんて
なんて皮肉な問いかけなんだ。
「私には、どうしても生きて欲しかった人がいます。その人をたった一度でいいから、私は笑わせたかった。だから、その後悔をやり直すために」
酷い字だ。
力が入っていなくて、汚くて読みにくくて
馬鹿みたいに愛しい字だ。
「___________私は今から、時を飛びます。」
もういよいよ
僕の目からは涙が止まらなかった。
それと同時に、全てを悟った。
僕にとっての一度目の梅雨は、君にとっての二度目の梅雨だったんだ。
14歳の僕が出会ったのは、16歳の君だったんだ。
そしてあの君は
僕が死んだ未来から来た君だったんだ。
そして君は死んだ。余命半年と宣告された病によって。
僕のためにその命を賭して。
僕を笑わせるために、その命を使って。
そして君は僕を救い、僕を笑わせ、僕を愛した。
僕を幸せにした。今の僕を君は作った。
「なん…だよ。」
こんなに鈍感で、面倒で、冷酷な僕を一人、救うために。
残り僅かな人生を僕に捧げたというのか。
僕は君のことを分かったようでいて、少しも分かっちゃいなかった。
君は僕が思っているよりもずっと大らかで、ずっと深くて
ずっと清らかでずっとずっと、僕を。
ずっと僕を、想ってくれていたんだな。
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カトラオ - はじめまして!!もちまるさんの小説に出会えて毎日仕事終わりに読むのが楽しみで仕方ありません。まだ全部読み切っては無いのですが、感動とドキドキの展開を毎日楽しみにしていることだけどうしても伝えたかったのでコメントを残します。 (2020年7月22日 21時) (レス) id: eccc16e070 (このIDを非表示/違反報告)
miginoaoi(プロフ) - 全部読みました。ボロ泣きしてしまいました…すごく切なくて感動する話ですね。続気が気になりました!今は無理でも貴方様の更新をずっとまちます! (2020年1月15日 0時) (レス) id: 5d51d334c7 (このIDを非表示/違反報告)
ハニートースト 通称,ハニトン!(プロフ) - 作者様の作品は全て読ませていただきましたが、完全に虜になりました。言葉選びが繊細で、儚くて、思わず世界に入り込んだ気分で読んでしまいます。こちらの小説なのですが、co shu nieというバンドのアマヤドリという曲がピッタリだったので、伝えてしまいました。 (2020年1月6日 19時) (レス) id: b6696be840 (このIDを非表示/違反報告)
聖羅(プロフ) - 初めまして。この小説を読んで泣きました。もちまる。さんの小説がとても大好きでずっと待ってました。これからもずっと応援してます! (2019年12月24日 23時) (レス) id: 07b14ef242 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ☆(プロフ) - 初めまして。君の脳になりたいの方を読んで此方にきました。私、本や映画を見ても絶対泣かないのに、この小説と君の脳になりたいの小説では泣きました。私は今不登校で、死にたいって思ってたけど、これを見てまだ頑張ろって思えました。何年でも待ってます。頑張れ! (2019年11月28日 14時) (レス) id: 65ed62dd2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もちまる。 | 作成日時:2019年8月12日 21時