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ページ30

「…明日、死ぬの。」


ようやく聞こえたその声は


本当に弱々しくて、


全ての悲しみや絶望を
そこに詰め込んだような声音だった。


「私、死ぬの。」


君はやっぱり
僕に向日葵のような笑顔を向けながら、


心の内にずっとその恐怖を抱えていたんだな。


それを君は、少しも外に出さないで。


一つ残らず、その心の中に押し込めて。



「もうすぐ息を吸えなくなる。もうすぐ、この意識も消えて無くなる。怖い。」


なのに僕は、


君の弱音を一つもまともに聞いてあげられなかった。


「本当は生きたい。生きられない。」


あぁ、そうだよな。


僕だって


本当は君と生きたかった。


君と生きるということがすなわち、
僕が生きるということだった。



「あのね。もし2年後の雨の日に、私のことを思い出したら。その時にもう一度、私を探して。」







「羊が手紙の続きを届けにくるから。」








________それからどう過ごしてきたか、僕の中での記憶は曖昧だ。


ただ君という人間がいなくなっただけで、一日がものすごく淡白になってしまった。


君に出会う前の世界に、戻っただけなのに


強烈に鮮やかで、カラフルな絵を
まるでモノクロコピーにかけたような感覚だった。


「野坂さん。本当に申し訳ありません。俺がついていながら…。」


王帝月ノ宮は、フットボールフロンティアでの優勝を逃したらしい。



僕の従者________いや、“親友” がそれを知らせにきたのは


君が死んだ翌日のことだった。



「いいんだ、西蔭。突然チームから抜けてすまなかった。苦労をかけたね。」


「いえ…野坂さんがいない間、チームを率いていたのは俺です。あなたの目標を、俺は何も成し遂げられなかった。」


「…そんなことは、もうどうだっていいんだよ。西蔭。」


君と生きる、ということをやり遂げられなかった僕には
もう何をやり遂げたって、この虚しさがつきまとうのは分かっている。


「もっと大切なことがあると気付いたんだ。」


「大切なこと…?何ですか、それは。」


「駅前の商店街に、色んなカフェやレストランがたくさんあるんだ。美味しいものを食べに行こう、西蔭。」


この時に、西蔭がはにかんだ理由が僕にはよく分からない。


だけど、君と食べた時と同じように


西蔭と食べるものは本当に美味しかった。

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カトラオ - はじめまして!!もちまるさんの小説に出会えて毎日仕事終わりに読むのが楽しみで仕方ありません。まだ全部読み切っては無いのですが、感動とドキドキの展開を毎日楽しみにしていることだけどうしても伝えたかったのでコメントを残します。 (2020年7月22日 21時) (レス) id: eccc16e070 (このIDを非表示/違反報告)
miginoaoi(プロフ) - 全部読みました。ボロ泣きしてしまいました…すごく切なくて感動する話ですね。続気が気になりました!今は無理でも貴方様の更新をずっとまちます! (2020年1月15日 0時) (レス) id: 5d51d334c7 (このIDを非表示/違反報告)
ハニートースト 通称,ハニトン!(プロフ) - 作者様の作品は全て読ませていただきましたが、完全に虜になりました。言葉選びが繊細で、儚くて、思わず世界に入り込んだ気分で読んでしまいます。こちらの小説なのですが、co shu nieというバンドのアマヤドリという曲がピッタリだったので、伝えてしまいました。 (2020年1月6日 19時) (レス) id: b6696be840 (このIDを非表示/違反報告)
聖羅(プロフ) - 初めまして。この小説を読んで泣きました。もちまる。さんの小説がとても大好きでずっと待ってました。これからもずっと応援してます! (2019年12月24日 23時) (レス) id: 07b14ef242 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ☆(プロフ) - 初めまして。君の脳になりたいの方を読んで此方にきました。私、本や映画を見ても絶対泣かないのに、この小説と君の脳になりたいの小説では泣きました。私は今不登校で、死にたいって思ってたけど、これを見てまだ頑張ろって思えました。何年でも待ってます。頑張れ! (2019年11月28日 14時) (レス) id: 65ed62dd2f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちまる。 | 作成日時:2019年8月12日 21時

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