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夢のような現実 ページ21

「頭が真っ白になって、全身の力が抜けて、床に座り込んで。そっからはずっと、夢のような現実の世界。」


「夢のような現実?」


「そうだよ。これは何かの悪い夢だって、そう思わなきゃ息も吸えないような、紛れもない現実の世界。」


「君は今も、そんな世界で生きているの。」


「うん、そうだよ。でも今の世界は、苦しくない方の夢のような現実の世界。」


「…どうして?」


「生き返ったの。その人がね。」


君はとうとう、頭がおかしくなったのだろうか。


死んだ人が生き返るわけがない。


死んだ君の両親が、二度と帰ってこなかったように。


死んだ君が、二度と息をしなかったように。


「ねぇ野坂くん。」


か細くて、小さくて、だけどその中に力強さを秘めているような声で君は僕の名前を呼んだ。


「その人があなただって言ったら、どうする?」


やっぱり君は、頭がおかしい。あまりにも、狂っている。


僕は今もこうして息をして、この心臓を動かして、君と話をしているし


死んだ覚えなんてこれっぽっちもないのだ。


だけど、君は少しも冗談めかす様子なく
大真面目にそう言うものだから


きっとその言葉には
こう返すのが正解だろう。


「そうだな。もしも君の話が本当なら。」


この話は、僕にこう言わせるための君の嘘かもしれない。

君の想像で勝手に作り上げられた、即席の作り話かもしれない。

それならそれで、良いだろう。

だって僕は。



「君の恋心に、応えたいと思うよ。」



僕は「君が死ぬかもしれない」という不確かさと同じくらいの確率で




君のことが好きだからだ。





「…え?」


後先のことなんて、何も考えていなかった。


ただ今、目の前にいる君が可愛くて、綺麗で


守りたいような、少しだけ虐めたいような気持ちが揺らいで


君の身体をこの腕で抱き締めたいという思いがふつふつと沸いて出たからという理由だけで


僕はそう言った。


「それって、どういうこと?」


「さぁ、どうだろうね。」


「どうだろうじゃ分かんないよ。バカ。」


君はやっぱり嘘つきだ。


分からなければ、君の顔は今赤くはならないはずだし


その目に涙を溜めながら笑顔を浮かべる君の表情の矛盾を、解けなくなってしまうだろう。


「僕は多分、君が好きだよ。」


自分らしくない言葉を吐いたばっかりに、なんだか違和感だらけの気持ちではあるが悪くない。


僕が僕の中に見つけた僕の一部分を


初めて君に曝け出そうと思うんだ。

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カトラオ - はじめまして!!もちまるさんの小説に出会えて毎日仕事終わりに読むのが楽しみで仕方ありません。まだ全部読み切っては無いのですが、感動とドキドキの展開を毎日楽しみにしていることだけどうしても伝えたかったのでコメントを残します。 (2020年7月22日 21時) (レス) id: eccc16e070 (このIDを非表示/違反報告)
miginoaoi(プロフ) - 全部読みました。ボロ泣きしてしまいました…すごく切なくて感動する話ですね。続気が気になりました!今は無理でも貴方様の更新をずっとまちます! (2020年1月15日 0時) (レス) id: 5d51d334c7 (このIDを非表示/違反報告)
ハニートースト 通称,ハニトン!(プロフ) - 作者様の作品は全て読ませていただきましたが、完全に虜になりました。言葉選びが繊細で、儚くて、思わず世界に入り込んだ気分で読んでしまいます。こちらの小説なのですが、co shu nieというバンドのアマヤドリという曲がピッタリだったので、伝えてしまいました。 (2020年1月6日 19時) (レス) id: b6696be840 (このIDを非表示/違反報告)
聖羅(プロフ) - 初めまして。この小説を読んで泣きました。もちまる。さんの小説がとても大好きでずっと待ってました。これからもずっと応援してます! (2019年12月24日 23時) (レス) id: 07b14ef242 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ☆(プロフ) - 初めまして。君の脳になりたいの方を読んで此方にきました。私、本や映画を見ても絶対泣かないのに、この小説と君の脳になりたいの小説では泣きました。私は今不登校で、死にたいって思ってたけど、これを見てまだ頑張ろって思えました。何年でも待ってます。頑張れ! (2019年11月28日 14時) (レス) id: 65ed62dd2f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もちまる。 | 作成日時:2019年8月12日 21時

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