賑やかな注文 ページ3
僕は、それまでの歩くスピードをわざわざ早めてまでコンビニへと急いだ。
君があの顔で今か今かと僕からの電話を待っているのかもしれないと考えたら、身体が勝手にそう動いたのだ。
「もしもし。」
コンビニの十メートル程手前で、僕は再び君に電話をかけた。
この緑色の発信ボタンを押すことに、これだけ心踊る日がくるとは今まで思いもしなかったが。
「あ！もしもし？」
一度目の呼び出し音が途切れるよりも前に、君の声が聞こえてきた。
やっぱり、君は携帯を目の前に置いてこの時を楽しみに待っていたのだろう。
「何を買えばいいの。」
「えっとね。まずは、ポテトチップス！」
「味は？」
「んー、コンソメ！」
「分かった。」
そういえば、一度目の6月に病院で君が僕に押し付けたのも、コンソメ味だったな。
きっと君の好みだ。覚えておこう。
「その次は、チョコレート。ちっちゃいのが、いっぱい入ってるやつ！」
「ミルクとダークがある。」
「ミルクがいい！…入れた？」
「入れたよ。」
電話の向こうで、一々跳ねるような君の声に
僕の耳は溶かされそうになっていた。
君の声を聞いているだけで、嫌なことなんて全て忘れられるのではないかと思うほどだ。
「じゃあ、次。ポップコーン！何味がある？」
「塩しかない。」
「じゃあ、それで決まり。」
「次は？」
「うーん…グミかな。」
“次は？”と聞いたのは僕だけど
正直これ以上買っても食べきれるわけがないと心のどこかで思っていた。
しかし君は、まだまだこの注文を止めるつもりはないようだ。
「どれ買えばいい？」
「オレンジと、ぶどう。種類は何でもいいや。」
「…ん。」
「入れた？」
「うん。」
「じゃあ次は、飲み物の方に移動して。」
君は今頃、コンビニ内の情景を一生懸命頭に浮かべて僕に指示をしているのだろう。
そう考えたら、例え食べきれないほどの量だったとしても
僕は喜んでそれを買うしかないと思った。
「移動したよ。」
「よし！そしたらね、コーラと、オレンジジュース。あと、野坂くんが飲みたいやつ！」
こんなにも甘いものばかり食べるのかと思ったら、流石にジュースを飲む気にはなれなくて
僕はお茶を一本カゴに入れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 239人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ｶﾄﾗｵ - はじめまして！！もちまるさんの小説に出会えて毎日仕事終わりに読むのが楽しみで仕方ありません。まだ全部読み切っては無いのですが、感動とドキドキの展開を毎日楽しみにしていることだけどうしても伝えたかったのでコメントを残します。 (2020年7月22日 21時) (
レス) id: eccc16e070 (このIDを非表示/違反報告)
miginoaoi(プロフ) - 全部読みました。ボロ泣きしてしまいました…すごく切なくて感動する話ですね。続気が気になりました！今は無理でも貴方様の更新をずっとまちます！ (2020年1月15日 0時) (レス) id: 5d51d334c7 (このIDを非表示/違反報告)
ハニートースト 通称,ハニトン！(プロフ) - 作者様の作品は全て読ませていただきましたが、完全に虜になりました。言葉選びが繊細で、儚くて、思わず世界に入り込んだ気分で読んでしまいます。こちらの小説なのですが、co shu nieというバンドのアマヤドリという曲がピッタリだったので、伝えてしまいました。 (2020年1月6日 19時) (レス) id: b6696be840 (このIDを非表示/違反報告)
聖羅(プロフ) - 初めまして。この小説を読んで泣きました。もちまる。さんの小説がとても大好きでずっと待ってました。これからもずっと応援してます！ (2019年12月24日 23時) (レス) id: 07b14ef242 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ☆(プロフ) - 初めまして。君の脳になりたいの方を読んで此方にきました。私、本や映画を見ても絶対泣かないのに、この小説と君の脳になりたいの小説では泣きました。私は今不登校で、死にたいって思ってたけど、これを見てまだ頑張ろって思えました。何年でも待ってます。頑張れ！ (2019年11月28日 14時) (レス) id: 65ed62dd2f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もちまる。 | 作成日時：2019年8月12日 21時
