夢の後先 (ページ6)

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atosaki 6 ページ6

【？】

「こちら剣道部ですけど、何か御用ですか？」

何のコスプレなのかはわからないけれど、見るからに「剣道部です」という恰好をした女の子に真顔で言われた俺。

その時から君は俺のアイドルになり、俺は君のファンになった。

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本来なら卒業式が終わっているはずの4月のある日。

いろいろ考えた結果、もう1年間大学生をすることにした俺は、お世話になっている教授と相談したいことがあって、本来なら行かない1,2年が通う校舎に出向いていた。

「その日はサークル勧誘やってるから、遅めの時間に来たほうがいいよ」

1年生は君に慣れてないから、騒ぎになっちゃうかもしれないからね、と教授。

ここでは1人の大学生なんだから、そーいうのメンドクサイんだけど、商売柄仕方ないやと諦めて。新入生は既に下校しているであろう時間を目掛けて、懐かしい校舎に足を踏み入れる。

校内のメインストリートを歩く新入生を両脇に店を構えた部活やサークルが呼び込む方法で、勧誘は行われる。これは数年前も今も同じ。自分が新入生の時は、どーせどこにも入れないし、せっかく仲良くなった同級生に迷惑をかけるのも嫌だったから、裏道を抜けて下校したんだっけ。

時間をずらしたおかげで、人は既にまばら。派手な看板や飾りつけも撤収されており、残っている人も片づけに必死で俺に気づくそぶりも無さそう。

今日はもう仕事も無いし、用事が終わったら裏の公園でノンビリしてから帰ろうかなんて考えながら歩いていたら、祭の余韻がプンプンする集団が見えて。
大学生5年目だけどこーいうのを間近で見るのは初めてだから、つい近づいてしまって。

その中に、本当に古き良き時代からタイムスリップして来たんじゃないかというくらい袴姿が似合う、強くて凛々しい君が居た。

やばい、目が離せない。

棒立ちで凝視してたら、そりゃ俺だとバレるのは当たり前で。周りが完全に「俺」に気づいて動揺する中で声をかけてきた君は、きっと俺の仕事を知らないんだろう。

本来は喜べない事実も何故か嬉しくて。

そして、本能的に君の姿を手元に残したくなって。

・・・気づけばシャッターを押していた。

あーそうか、公式写真を持ち歩くファンって、こんな気持ちなのかなんてホワホワ膨らんだ心は

「ちょっとーいきなり撮らないでくださいよー！いくらでもポーズするし、なんなら一緒に撮りましょうか？」

俺の事情などこれっぽっちも知らない、君の声により秒で割られてしまったのだけれど。