夢の後先 (ページ32)

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atosaki 32 ページ32

【you】

こーちさん曰く「ダブルベッドサイズ」に大人ふたりだから、凄く距離が近くて。
それでも何とかパーソナルスペースを確保するべく、壁ギリギリに寄っている私。

「顔ぶつけるよ？」
「もうぶつかってるからいいです」
「オデコに壁紙の模様つくよ？」
「たいしたことないオデコだから大丈夫です」
「たいしたことないオデコって何？」

身体痛めるからこっちに来なさいって、笑いながらグイッと引き寄せられて、軽く抱きしめられる形になる。

「やっぱり女の子だね、ふわふわしてる」

どうしよう、どうしよう、どうしよう。

・・・いや、どうすることもできないんだけれど。

腐っても武道の有段者。実力行使をすれば抜け出せることは解ってる。
でも、抜け出す気なんて全然起こらないし、ずっとこのままでもいいやなんてことを思いはじめている。

とは言うものの、慣れないことをされると身体は硬直してしまうようで

「そんなに緊張しなくても、取って食ったりしないから」

・・・こーちさん、絶対苦笑いしてる。

「嫌だったら、俺兄貴の部屋で寝」
「嫌じゃないです！」
「即答かよ」

可愛いと耳元で囁かれて、こーちさんの腕の力が強くなる。

ヤバい、このままでは・・・溶けて無くなる。

「・・・こーいうの、されたことないから」

途端に回されていた腕が弛んだ。

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【yugo】

俺の勝手な理解かもしれないけれど。

そーいうことに余程興味がない人種以外は、大学生のうちには済ませるモノなんじゃないだろうか。美形の部類に入る子であれば尚更。

「そっか・・・怖い思いさせちゃったね」
「怖くはないんです。家族も男性だけだし、友達も男子のほうが多いし」
「・・・」
「部活の合宿も女子が少なすぎて雑魚寝だったし」
「・・・」
「・・・こう、男の人とくっついて寝たことが無いだけで」

要するに。男女の違いを意識しないタイプを拗らせた結果、色恋沙汰とは無縁。致すどころか抱きしめられるのにも慣れてないと。

・・・の割には、抵抗はしないのね。今まで周りに居た男が余程紳士だったんだな。いや、紳士じゃねえな、聖職者か？

きっと複数存在するであろう、現在進行形でこの子に振り回されている知らない誰かを想像し、彼らに向かって心からのエールを送った。

・・・送ったはずなのだが。

「こーちさん」
「ん？」
「こっち向きだと寝にくいから、そっち向いていいですか？」

・・・エール撤回。誰か俺にこの子の対処法を教えてください。