夢の後先 (ページ25)

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atosaki 25 ページ25

【you】

数カ月ぶりに、自転車でミドリまでの道を走る。

先輩は私が目を覚ますまで側に居てくれた。

そして先輩命令として「男との宅呑み禁止(彼氏を除く)」を私に言い渡し、タクシーを呼んで帰って行った。

あれから数日間、もやもやしたままバイトが始まるのは嫌だったので、大学に竹刀を振りに行ったり、社会福祉士対策講座のパンフレットを集めて回ったり、予定を詰め込んで過ごした。

おかげでスッキリ・・・とまでは行かないが、仕事モードにはなったと思う。

「うん、1カ月ちょい頑張るぞ」

泣いても笑っても学童保育のアルバイトは最後。冬は社会福祉士試験の寸前になるから、どうしたって来れない。

・・・だから、こーちさんに会える可能性があるのも、この夏しかない。

実は村上さんからは「ヒガシに戻りますか？」という話もいただいていた。でも、せっかくミドリの子どもたちと仲良くなれたから、ミドリに残りたいと希望した。

嘘は全く言っていない。でも、ヒガシに戻ったらこーちさんに会える可能性がゼロになる。それが嫌だったのも事実。

連絡先を知らないどころか、相手は私の名前すら知らない。最寄り駅が同じなだけだから、会えるかどうかすら解らない。

更に、私は相変わらず「好き」が良く解らない。

それでも、こーちさんに会いたいと思ったし、会ってお話したい、私のことを知ってほしい。

待ち受けにしたらマズいだろうなと、画像フォルダに仕舞い込んだ写真を見て気合いを入れる。

・・・いきなり撮られたみたいで、こーちさんびっくり顔だし、後ろの絵面はうるさいし、気合いが入るような写真じゃないんだけれど。

A今日からバイトっす
なかじま頑張れ!高地によろしく
Aいや、だから何で会える前提なんですか
なかじま大丈夫、君との関係は秘密にしといてあげるから
A渾身の力で面1本決めてあいいですか?
なかじませめて胴にして

先輩は何もなかったかのように、変わらず私に接してくれる。だから私もそうする。

・・・でもね、知ってるんだ。

先輩、キスしましたよね？
眠りが浅かったから、気がついてましたよ。

流石にキスは初めてじゃない。いつだかの練習試合の打ち上げで王様ゲームに巻き込まれた。自分も酔ってたし、記憶も曖昧だけど。

・・・酔っ払いが起こした事故は、夢にしてしまえばいい。

それが素敵な夢であったとしても。