夢の後先 (ページ12)

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atosaki 12 ページ12

【you】

2017年3月

学童保育担当学童保育担当の村上です。春休みのアルバイトについてご連絡したいことがあるのですが、3/15までに役所に来ていただくことはできますか?

例年どおり2月に実家に帰省して、のんびりしていた午後に届いたメッセージ。

夏休みも冬休みもバイトで帰ってこれないから、大学生の特権(？)の長い春休みには、1ヵ月以上実家に居座ってあげるのがルーティンだ。男のふたり暮らし。年に1回は大掃除してやらないと、せっかくの木造建築にカビが生える。

・・・それにしても、何だろ？

自分で言うのもおこがましいけれど、1年生の夏休みから続けているベテランアルバイト。これまたおこがましいけど、剣道のお姉ちゃんとしてなかなか人気があったりするし、万が一にも外されることはないだろうし。

「ねえ、お父さん」
父「どうした？」
「学童から連絡が来てね、15日までに役所に行かなきゃなくなって・・・だから15日こっちに居られない」
父「仕方ないだろ、アルバイトと言っても仕事だからな」
「うん」
父「気にするな、この時期に帰ってきてくれればそれでお母さんも満足だろう」

母は東日本大震災で津波に巻き込まれて亡くなった。

その日はたまたま父が有給休暇で、たまたま母は友達と港近くで開催されたイベントに行っていて。
たまたま誘導の無い場所で津波に直撃されて・・・そのまま帰ってこなかった

父は当然、当時小学校6年生だった弟の迎えに行ったから、私は日が暮れるまで学校に取り残されて、やっと帰れたと思ったら、母親と連絡がつかないと伝えられて。

母親が見つかったのは、我が家にやっと電気が戻ってきた3月15日のことだった。

「そしたらさ、12日に戻るよ。11日はこっちに居たいし」
父「わかった」
弟「ねーちゃん、俺の合格祝いだけはしてってね！」
「はあ？発表いつだよ」
弟「明日だよ！」
「・・・落ちてしまえ」
弟「うわ、最低！こんなんだから男できねーんだ！」

クソ生意気な弟は某地元国公立大学の合格発表待ち。奴は私と違って無駄に頭がよろしくて。絶賛2次試験勉強中に帰省しちゃったから、今年はすごーく肩身が狭かったけれど。

復興が進む港町やら、新しくできた水族館やら、アウトレットやらに散々出かけて実家生活を満喫した。

あとはもう、ちゃんと各自の部屋があるサイズの家を建ててくれたお父さんにひたすら感謝して。

A承知しました。お伺いする日時はまたご連絡します。