夢の後先 (ページ11)

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atosaki 11 ページ11

【you】

ピコン

メッセージアプリの通知音で目が覚める。部屋を見渡すと車に轢かれたカエルみたいな恰好で寝ているカオル。
・・・そうだ、アイツ酔いつぶれて床で寝やがったんだった。日常だけど。

Kこれ俺だから。とりあえず登録しとけよハニー!

中島健人の隣で授業を受ける謎の日々も終わりかと、ほっとしたような寂しいような。そんな気分を豪快に打ち砕くメッセージ。

・・・そうだった。何かあった時にさ？ね？とゴリ押しされて、最後の試験の日にメッセージアプリだけ教えたんだった。

何もねーし。

つか、私がこれから金に困ってさ、例えば就活失敗したりしてさ、路頭に迷ってさ、これ売り飛ばすかもしれないじゃん！絶対しないけど。

登録名どーしよう？中島健人なんて入れたら、万が一背後から覗かれた時に悲劇だよね。

カオル「・・・それ、中島健人？」
「ぎゃっ！」

いつの間にか起きて、貞子のように忍び寄ってきていたカオルが背後から覗いている。流石剣道部主将、私の背後を取るとはお主侮れないな。

カオル「いろいろとさ」
「ん？」
カオル「・・・気をつけろよ」
「そーね、ファンにバレたら拉致じゃ済まないもんね」
カオル「いや、そっちじゃなくて」
「？」
カオル「・・・ごめん、何でもない」

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【kaoru】

A無事に突いたかー?
カオル突いてないけど着いた
Aヤベ、誤字った
カオル剣道部あるある
Aあー、めちゃくちゃ突きまくりたい!

・・・Aさん、発言が完全にアウト。

いや、俺だってちゃーんと理解してますよ？剣道の技ですよね？受験の構内立ち入り禁止期間に身体がなまっちゃうから、終わったらガチ練したいって意味ですよね？ええもう、いくらでも相手してやるから！！！

Aは何にもわかっていない。

俺の気持ちも。俺の気持ちに気がついていて、遠回しに俺らをくっつけようとしている奴らのことも。
アイツだけが何も気づかないままで、俺らの大学生活は終わりへのカウントダウンを始めているんだ。

そして俺はというと、片想い相手が同じ部屋で無防備に眠る姿を見慣れて、泥酔しても理性を保てる程に拗らせてしまっていて。

21歳の健全な男子としてどーなの？これ。

ここまでくると、アイツの隣に居るのが俺じゃなくても幸せならいいやとも思えてくるけど。

・・・カウントがゼロになるまでは想っていてもいいのかな。