あざとさ ページ16
緑side
少し落ち込みながら作業を進め、最終工程に差し掛かったところでまたドアが開く音がした。
またお兄ちゃん組の誰かやろう、と思い仕事に集中したままでいると、
目の前の椅子にドサッと座る音がする。
チラッとそちらに視線を寄せると、そこにはしげが座っとった。
「んなっ、帰ったんじゃなかったん?」
赤「はい、どーぞ」
彼の手にあるのは2つのコーヒー。
「あ、ありがとう」
とりあえず受け取って仕事を再開するも、彼は全く話しかけてこない。
なんか相談でもあるんか思ったんに。
「帰らないん?」
赤「帰ってほしいん?」
「いや、ちゃうけど.....」
その言い方はずるいやん。
彼は椅子を反対向きに跨ぎ、背もたれに腕と顔を乗せて俺のことを見とる。
そんなあざとさに心を掻き乱されながらもやっとのことで最後のEnterキーを押し、ファイルを保存する。
再度顔を上げると目の前にはすやすや寝とる整った顔があった。
「疲れとるなら帰ればええのに.....」
それでも待っとってくれた嬉しさと寝顔の可愛さにやられ、にやけが止まらない。
あー、あかんな。どんどん好きになっていく。
ただの上司と部下。先輩と後輩。
こんなに好きになってええんやろうか。
今の関係が崩れてまうんやないか。
色んな不安が一気に押し寄せてくる。
それなのに、俺は気づいたら彼の唇に触れてしまっとった。
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作者名:もちもち子 | 作成日時:2020年7月5日 22時