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＿＿2月14日
「まーきちゃんっ」
るんるん、と音符が見えそうなほどご機嫌に禪院に話し掛ける花宮。
後ろ手には可愛らしい小包を抱えている。
「ハッピーバレンタインデー！」
「おー、ありがとな。手作りか？」
「えへへ、僭越ながら……」
「僭越って……へりくだりすぎだろ」
相変わらず変なところで照れながら言う花宮に、禪院は苦笑いを見せる。
「ホワイトデーに返す」
「わーい！待ってる！」
禪院はこういったイベントは特に何をする訳でもないが、"貰ったものは返す"というポリシーである。
「あんま期待すんなよ」
「え〜、どうしようかな〜」
いつもよりもほんの少しだけ浮ついた気分で教室に向かう花宮と禪院。
禪院が教室の扉に手をかけ、開く。
「みんなおはよー…ってあれ？」
いつも花宮たちが教室に着く頃には自分たち以外が揃っているが、今日は違った。
「棘だけか？」
「しゃけ」
教室にいたのは狗巻だけで、パンダと乙骨はまだ来ていないのだという。
花宮は"珍しいなぁ"、と思いつつ狗巻に用意した"ソレ"を手に持つ。
「棘くん」
「？」
席に座ったまま花宮を見上げる狗巻。
そんな狗巻に花宮は"わぁ、棘くん可愛い…！"と思いながら小包を狗巻に差し出す。
「はい！ハッピーバレンタインです！」
「……えっ」
思わず声が漏れてしまい、バッと口を抑える狗巻。
じわりじわりと頬が染まっていく。
「あのね、私男の子にバレンタインあげたことなくて…あんまり自信ないんだけど、」
少し照れながら言う花宮に、思わず狗巻はグッと心臓を抑える。必死である。
花宮が初めて男に渡すバレンタインが、自分であるという事実だけで数年は生きていけると狗巻は確信していた。
「ん？えっ、大丈夫？」
「しゃ、しゃけ……」
「棘よかったな、手作りだぞ。Aの。」
「高菜……」
ニヤニヤと見つめてくる禪院に"やめてくれ"と心の中で唱えつつ、手渡された花宮の手作り菓子を大事そうにしまう。
「あり、がとう」
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作者名：もち明太 | 作成日時：2021年1月30日 3時
