#27 お隣さんとヘンな気持ち ページ27
「はぁ…そう、だったんだ」
「けどな、決めた。おれ今日からこっちで暮らすわ。もーあいつら毎日毎日煩いし、おれも元々1人の時間がないと我慢できひんタイプやし…あと、Aちゃんもおるしね？」
ブレザーの裾をチョン、と整えるついでに、私の方へ軽い目配せ。
“Aちゃんもおるしね”。
そこに何の深い意味もないとは分かっていても、くらりと逆上せるような熱が込み上げる。
だってこんなこと、言われたことないんだもん。
今までの人生で、たったの1度も。
「わ、わ……あ、え？じゃあもしかして」
「ははっ慌てすぎやろ」
「もしかして…今日から」
「うん、そーよ。今日からおれら、お隣さん」
肩にポン、と手を置かれてから、じわりじわりとその言葉の意味を理解する。
おとなり、さん。
永瀬くんが、私の。
…お隣さん。
…あれ。おかしいな。
私、同じ学校の人がお隣さんどころかご近所さんだったとしても嫌だからってここにしたのに。
だけど不思議と、嫌だと言う気持ちは湧いて来ない。
それより何だ、この気持ちは。
…何となく居ても立ってもいられなくなるような、焦り混じりの……ヘンな、気持ちは。
「…あ！あの、そしたら渡すものがあって」
「渡すもん？」
「ちょっ…と待っててください」
今にも外側に溢れ出しそうな感情を必死に隠すように、自分の部屋の鍵を開けた。
部屋に入って荷物も置かずに、慌てて持ち上げたのはお菓子の箱。
…これ、賞味期限明日なのに。
あんな細い人が、これだけの量のお菓子を、明日までに食べ切るとは到底思えないけど。
一応体裁を繕うってことで、渡しておこう。
「あの、これ。お隣さんに挨拶するついでに渡そうと思ってたんですけど、いなかったから…」
「…え！ごめ、もしかして何回もピンポンしてくれたん？」
「いや…別に、その」
「うわ、めっちゃごめんやわ。面倒やったね」
謝られるのは、苦手だった。
相手に申し訳ないと思わせているのが、逆になんだか申し訳なくて。
…けど彼の気軽なノリとか、内側から滲み出てくる軽やかで明るい雰囲気が、そんな気持ちをも吹き飛ばしてしまう。
彼は尽く、不思議な人だった。
「いえ、そんなことないです。…ただそれ、賞味期限が明日…までなので」
「やばぁ、どしよ。おれめっちゃ罪深い。これ何？お菓子？」
眉をハの字に潜めながら、笑って聞く彼。
何の壁も感じさせないこの表情は、きっと色んな人の心を解してしまう。
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もちこ(プロフ) - yimmさん» はじめまして！コメントありがとうございます。お楽しみ頂いているようで何よりです…！ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月25日 17時) (
レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - もちこさん、はじめまして☆お話楽しく読ませていただいてます。この後の展開を妄想するとなんかだかドキドキ(笑)更新頑張ってください。 (2020年10月25日 7時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - しおりさん» コメントありがとうございます。主人公可愛く書けててよかったです…！これからも是非色んな想像をしながらお楽しみいただけると嬉しいです、よろしくお願いします！！ (2020年10月23日 17時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 欲しいスタンプ俺が買ったるって何語ですか…？永瀬さんの妹になって買って貰いたい！それからなんですか！主人公ちゃんの可愛さ！！永瀬の妹って立場利用して主人公ちゃんと付き合いたい！ (2020年10月22日 21時) (レス) id: 199b427b1e (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます！そう言って頂けてとっても嬉しいです。ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月20日 22時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちこ | 作成日時：2020年10月13日 19時
